カテゴリ:詩歌つれづれ
マライア・キャリーが、その超絶の歌唱力を世界に知らしめた名曲「恋人たちのクリスマス」がラジオや街角で流れる頃となった。
この歌詞は本当に微笑ましい、笑える。楽しい。 オリヴィア・ニュートン・ジョンが世に出た「そよ風の誘惑 Have You Never Been Mellow」なんかもそうだが、泰西の歌の歌詞って、ストレートでユーモラスで、日本語の歌詞の感覚からすると、これ、コミックソングではないかと思われるようなのも多い。 この曲の歌詞も、“プレゼントなんて要らないわ、おもちゃを持ったサンタクロースなんて誰が喜ぶの?クリスマスツリーのもとで、暖炉のそばで、All I want for Christmas is you(わたしがクリスマスにほしいのは、あなただけ)”のサビが落ちになっていて、途中で想像はつくが、“やっぱし”の予定調和ぶりで、老若男女が楽しめるウェルメイドなポップチューンになっている。 アメリカ人というのは、こういうのでシミジミできてしまうのかも知れない。・・・陽気な奴らだ。 しかも英語の“you”は至極便利であり、恋人や夫や妻かも知れないし、この聖夜に生まれたとされる神の御子なるイエス・キリストかも知れないという多義性を持たせることができる。 例えば、ジョージ・ハリソンの一見ラブソングのようにも思える曲の歌詞のほとんどの“you”は、“God”の意味であるといわれる。 しかも単複同型であるから、これは複数の「子供たち」のことかも知れない。 これはもともとyouが、二人称単数だったthouの複数形であったことによる(thouは、現在、非常に古めかしい詩的・宗教的表現などに使われるだけになっている)。 ここでどうしても連想してしまうのは、和歌史上の最高傑作の一つ、 「銀(しろがね)も金(くがね)も玉も何せむに勝れる宝子に若(し)かめやも」(山上憶良、万葉集803)である。 ――逐語訳:銀も金も宝玉も何になるのだろう、これらに勝る宝である子供に及ぶだろうか(いや、及ばないだろうなあ)。 くまんパパとしてはやはり、 銀も金も玉もなにせむにクリスマスには汝らの笑み となってしまふのである(盗作)。 この千数百年前の和歌が、どうもこの作詞者にパクられたらしい。 ・・・というのはもちろんジョークですから、念のため。 ビートルズの代表曲の一つである「愛こそはすべて All You Need Is Love」の歌詞の発想にも似ている。 ・・・これは、ややマジです。 たぶん、MISIAの「Everything」は、この歌詞の影響を受けていると見て間違いないだろう。 何となくこの時期に聴きたくなるところも似ている。 これまた日本人離れした驚くべき歌唱力でぐいぐい盛り上げるスケールの大きな名品だが、難を言えば、ちょっと長すぎて冗漫さがある。 こういうコッテリしたご馳走は、日本人の消化器系には重すぎる。 もう少し、やや物足りないぐらい短くてもよかったかな、なんて思う。 ところで、全然話は変わるが、映画「犬神家の一族」は、興行的に低迷している(興行用語で言うと「コケた」)らしい。時間とお金をかけて非常に丁寧に作られた作品だけに、いっそう敗北感が際立っているようだ。 敗因は芸能畑ジャーナリズムなどであれこれ分析されているが、30年前の映画化はともかくテレビで何度もリメイクされており目新しさがなかったことや、30年前に斬新だった幻想的なレトロ(懐古)趣味が、豊かになった今では当たり前になったこと、また、松嶋奈々子が熱演しているが、やはり有り体にいって旬を過ぎかかっていて若い客層を呼び込めなかったことなどが挙げられている。 確かに、単なる懐かしさ(ノスタルジー)だけで、客はお金を払ってはくれない。 例えば「三丁目の夕日」は、同じ古い時代へのノスタルジーでも、スクリーンの上に、これまで誰も見たことがない、あるいは忘れ去られていた新しいノスタルジーが再創造されていたことが違っていた。 豪華キャストといわれても、それは供給側の論理に過ぎず、富司純子、松坂慶子さんらがかつて大スターだったことは分かるが、僕らの世代から見てももうおばあちゃんだし。 やっぱり芸能・ショービジネスって水もの(オミズ)だね~。 感性の問題だけに、難しい。 相変わらずまとまりのない記事でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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