フランス 2011年
監督 エリック・トレダノ、 オリビエ・ナカシュ
出演 フランソワ・クリュゼ オマール・シー
ネタバレ。
「あなたとは違うんです」は、日本の政治家の発言。
私とあなたは違う。
それで終わり、なのか。
だからいびつな関係になる、のか。
もしくは、それを越えて次に進める、のか。
オマール・シー演じるドリスは
「そんなの関係ねぇ」だね。
フィリップは、首から下が麻痺。車いすとベット生活の障がい者。
そして、ケタはずれの大金持。
パリの豪邸には彼専属のシェフ、看護師、スタッフが万全の体制でケア。
プライベートジェットも高級スポーツカーもあって、
現代アートに投資したり、オペラ観たり、お誕生日にはオケ呼んじゃう。
ある意味、「何不自由ない」暮らし。要はセレブ。
よく、障害を乗り越える=頑張る・・・みたいなのあるけど、
フィリップは頑張る必要なし。
でも、金だろうと医療だろうと、限界はある。
彼の身体と精神を襲う苦痛を、全て癒せるわけではないの。
片や、ドリスはスラム街育ちの失業者。フィリップとは別世界の住人。
この何の経験もないドリスを、フィリップは最も身近な介護スタッフとして雇う。
それは、ドリスはフィリップに同情しなかったから。
同情しない。それが、どれほど難しいことか。
しかし、ドリスはジャン・バルジャンのような聖人君子、人格高潔じゃあない。
イエローカードかレッドカード(地上波無理)満載。
現代アートも「鼻血ぶーじゃね?」だし、オペラにも大爆笑。
お友達にするにはちょっと困るかも。
見ててはらはらしたけど、今ならわかる。
だから、よいのだ、うん。
だれでもドリスになれるってこと、だよね。
ところが。
フィリップとドリスがお互いの理解を深めるほどに
この関係の危うさが見えてくる。
ドリスはフィリップに雇われてるのだから。
仕事上の関係だから。
たとえ一緒にパラグライダーをしても、一緒にああいうところでこういうことをしてもらっても(この「耳だけでね」の場面、好きだなー。ドリスのフィリップに対するさりげない気づかいがわかるんだもん)。
だから、フィリップはドリスを退職させる。
ドリスがいないということ。
それがどれほど辛いことかわかってるのに(涙)
ま、ちゃんとハッピーエンドが用意されてるけどね。
さて、私の一番のツボはお誕生日の場面。
「ブギーワンダーランド」で踊るドリスが、
テンジンに見えたーー!!
普通、車いすの人のBDにダンスはないでしょ。
でも、ドリスはちょー楽しそうに踊るのよ。
「だって、今日はフィリップの誕生日だよ」って。全身で喜びを表す。
そりゃあもう、堅苦しいことも忘れて、みんなも踊るさ。
フィリップもうれしいさ。
ドリスは家庭的に恵まれてはいない(テンジンじゃん)。
孤独に近い境遇だけれど、だから笑って、踊って(同上)。
「セプテンバー(リプライズ)」は、ウル目になるわけです。
障がいにフォーカス当たってるけど、
ドリスにアフリカ系のキャスティングをしたり、同性愛の女性を出したりと
なかなか上手く盛り込んでる。
原題は「INTOUCHABLES」。いやー、「アンタッチャブル」ですか。
深み倍増です。