インド、対中貿易赤字拡大 RCEP
RCEPでインドのモディ首相が妥結拒絶したのは、貿易赤字が拡大傾向にあり、貿易の自由化をすすめたら仇敵の中国に経済的に飲み込まれてしまうと考えたから。 インドの近年の対中貿易赤字の増加は、スマートフォン・パソコン・家電やそれらの部品などの輸入増によるもの。 貿易赤字を縮小するにはこれら耐久消費財の国内生産を進める必要がある。 中国企業の対印投資機運の高まりにより、対中輸入を代替する動きは徐々に進展している。 しかし、中間財の現地調達率の引き上げには時間がかかることから、対中輸入への依存は当面続く。 一方、中国向け輸出拠点としてインドを活用する動きは限られる。 今後も対中輸出の伸びは輸入を下回る構造が続く。 当面、対中貿易赤字は拡大する傾向と見られる。 対中貿易赤字を縮小するには、大きな消費市場を抱えるインド国内のビジネス環境の改善をはかり、中間財・資本財の生産者の育成をはかり国内生産量を増加させ、様々の輸出商品を増大させることが必要となる。 2018年度の貿易赤字、過去最大の1,760億ドルにチェンナイ発2019年05月10日 JETRO インド商工省は4月15日、2018年度(2018年4月~2019年3月)の貿易統計(速報値)を発表した。 輸出額は3,310億ドルで前年度比9.1%増、輸入額は5,074億ドルで前年度比9.0%増となった。 輸出額は2年連続で3,000億ドルを突破したものの、政府が当初掲げていた年間目標の3,500億ドルには届かなかった。 輸入額は国際的な原油価格の高騰などを背景に500億ドル近く増加。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は過去最大の1,764億ドルの赤字となり、前年度の1,568億ドルに比べ赤字額が12.5%拡大した。 インド経済モニタリングセンター(CMIE)によると、輸出額の上位2品目である石油製品、宝石・宝飾品以外の品目の輸出額は、2,429億ドルで前年度比8.2%増加した。 最大の輸入品目である原油・石油製品の輸入額は1,408億ドルで、前年度比29.5%増加し、原油・石油製品以外の輸入額も3,680億ドルで、前年度比3.1%増加した。 ― 引用終り ― 2018年の失業率は都市部の男性などで統計がさかのぼれる過去45年間で最も高い水準となった。 特に都市部で雇用悪化が深刻。 人口増に製造業など雇用の受け皿の育成が追いつかず、消費(内需)が上向かない一因となっている。 また人口の多くの部分を占めている農民にも、貿易自由化と開発独裁は支持されていない。 GDPが増大するにつれ、一人当たりのエネルギー消費量は増大する。 インドでは十分に電気が供給されてこなかったので、電気の消費量は供給力の増大に比例して伸びる。 モディ首相はクジャラート州首相時代、電気などのインフラの整備をすすめて生産工場の誘致をすすめて、州経済を豊かにした。 今のインドで失業率を低下させるための産業の育成には、電気、水道などの基本インフラの整備が必須。 資本蓄積の少ないインドがRCEPに同意するには、少なくとも国内向けの産業経済が国内の需要を賄える体制の整備が必要。 また景気拡大のテンポが鈍化しているインドでは、国内資本の保護を緩めて、外資を導入できる環境の整備が合わせて必要となる。