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私訳・源氏物語

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April 2, 2010
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カテゴリ:源氏物語

「しかしここよりも人少なな所は、あるだろうか」

「仰せの通りでございます。
されど女君の家では女房たちが悲しんで泣き惑うでございましょうし、
それを人の多い隣家の里人が聞き咎めますと自然に世間の評判にもなり、
宜しくはございませぬ。

さすれば山寺こそこのようなことが立ち混じり、人目につかぬことでございましょう。

 昔私が世話した女房が尼になっております東山のあたりに、お移し申し上げましょう。
尼は惟光の父朝臣の乳母でございました者で、年老いて住んでいるのでございます」

 と申し上げて、まだ薄暗い明け方にまぎれて、西の対に御車を寄せます。

 源氏の君は女君をようお抱きになれませんので、
惟光が夜具におし包んで車に乗せたてまつります。

 女君はたいそう小さくて、死骸ですのに気味悪さもなく可愛らしげなのです。

しっかりと包まなかったので、長い髪が夜具からこぼれ出ています。

それをご覧になります目も涙で暗くなり、あまりにも悲しく、
最後まで見届けたいとお思いになります。惟光は、

「さあ、御馬で二条院へお帰りください。夜が明けて、人が起きてこぬうちに」

 と、自分の御馬をたてまつります。

 そして右近を車に乗せ、思いもよらぬ葬送なのですが、
源氏の君のお悲しみを見たてまつりますとお気の毒で、
自身は指貫の裾を捲くり上げた怪しい格好で、
身を捨ててまで尼寺へと歩いて行くのでした。






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最終更新日  March 7, 2017 06:56:50 PM
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