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私訳・源氏物語

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December 14, 2012
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カテゴリ:源氏物語

九月になると紅葉があちらこちらで色づいて、

中宮の御前のお庭はえも言われぬうつくしさです。

風が吹いたある夕暮れに、
中宮は御箱の蓋に色々の花紅葉を取り交ぜて紫の女君に差し上げました。

大柄な女童(めのわらわ)が濃紫の袙に紫苑の織物を重ね、
たいそう着馴れた赤朽ち葉色の羅の汗衫を着て、
廊や渡殿の反り橋を渡ってこちらにやって参ります。

このような場合はきちんとしたお作法で、女房を通すべきなのですが、
中宮はかわいらしい女童をお遣わしになりました。

この女童は高貴な御方にお仕えし馴れていますので、
身のもてなしも立ち居振る舞いも他の童女にはない好ましさがあって可愛らしいのです。
中宮からの御文には、

「心から 春待つ園はわが宿の 紅葉を風の つてにだに見よ

(そちらのお庭では、春の到来を心待ちにしていらっしゃることでございましょう。
せめて私の庭の紅葉を、風のたよりになりとご覧くださいませ)」

とあります。若い女房たちがお遣いの女童をもてなす様子が面白いのです。

紫の上からのお返事は、この紅葉の箱の蓋に苔を敷き、
岩などを配置した趣向を作ります。
その岩の根元に五葉の松を植え、枝に御文を結びました。

「風に散る 紅葉はかろし春の色を 岩根の松に かけてこそ見め

(風に散る紅葉は軽くて物足りのうございますわ。
春の色を、このどっしりとした岩に生える松の緑に託してこそ
ご覧いただきとうございます)」

 この岩根の松もよく見ると、実に上手にできた作り物なのでした。

このように、咄嗟に思いついた事でも趣味の良さを伺わせる才覚を、
中宮は興味深くご覧になります。
御前の女房たちも、褒め合いました。源氏の大殿は、

「この紅葉の御文は、いかにも癪に障りますね。

でも、あなたは春になって花ざかりの折に、このお返事をなさいませ。

秋に紅葉を悪く言っては立田姫の思惑もおありでしょうから、
今は一歩退いて、春が来た時に花盛りを盾にしてお返事なされば、
強い言葉も生きることでしょう」

と申し上げます。
たいそう若々しくいつまでもうつくしいご様子は、どこから見てもすばらしいのですが、
その上理想的なお邸で、女君達は互いに御文をお交わしになります。

 大井の明石の御方は、女君達のお住いが定まったのを見て、

『私のように人数にも入らぬ者は、こっそり移りましょう』

とお思いになって、神無月に六条院にお移りになりました。

源氏の大殿は、明石の姫君の将来のおん為をお思いになって、
移転の儀式を他の夫人たちと同じようになさり、
たいそう物々しく丁重にお扱いなさるのでした。






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最終更新日  August 20, 2017 03:59:57 PM
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