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カテゴリ:源氏物語
九月になると紅葉があちらこちらで色づいて、 中宮の御前のお庭はえも言われぬうつくしさです。 風が吹いたある夕暮れに、 大柄な女童(めのわらわ)が濃紫の袙に紫苑の織物を重ね、 このような場合はきちんとしたお作法で、女房を通すべきなのですが、 この女童は高貴な御方にお仕えし馴れていますので、 「心から 春待つ園はわが宿の 紅葉を風の つてにだに見よ (そちらのお庭では、春の到来を心待ちにしていらっしゃることでございましょう。 とあります。若い女房たちがお遣いの女童をもてなす様子が面白いのです。 紫の上からのお返事は、この紅葉の箱の蓋に苔を敷き、 「風に散る 紅葉はかろし春の色を 岩根の松に かけてこそ見め (風に散る紅葉は軽くて物足りのうございますわ。 この岩根の松もよく見ると、実に上手にできた作り物なのでした。 このように、咄嗟に思いついた事でも趣味の良さを伺わせる才覚を、 「この紅葉の御文は、いかにも癪に障りますね。 でも、あなたは春になって花ざかりの折に、このお返事をなさいませ。 秋に紅葉を悪く言っては立田姫の思惑もおありでしょうから、 と申し上げます。 大井の明石の御方は、女君達のお住いが定まったのを見て、 『私のように人数にも入らぬ者は、こっそり移りましょう』 とお思いになって、神無月に六条院にお移りになりました。 源氏の大殿は、明石の姫君の将来のおん為をお思いになって、 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
August 20, 2017 03:59:57 PM
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