|
カテゴリ:源氏物語
今すぐお出かけになりたいとお思いになるものの、 『御息所はこう仰せだが、宮さまは気安く対面してはくださらぬ。 どうしたものか。今日は坎日(かんにち・陰陽道で凶の日)でもあるから、 御息所が結婚をお許しになったとしても日が悪かろう。 やはり吉日が理想というものだ』 と、あくまで几帳面にお思いになって、 先ずは御息所へのお返事をお認めになります。 「たいそう珍しいお文を頂戴しまして、あれこれ嬉しく拝見いたしましたが、 この御咎めにつきましてはどうお聞きになったのでございましょう。 秋の野の 草のしげみは分けしかど かり寝の枕 むすびやはせし (確かに先夜は秋の野を分けてお見舞い申しましたけれども、 仮寝の枕など結んではおりませんのに) 言い訳いたしますのも筋違いなようでございますが、 昨夜訪問しなかった罪につきましてはこのまま引き 下ってもいられませんので」 とあります。宮にはあれこれ多くをお書きになって、 駿足のお馬に鞍を置いてあの晩の大夫をお召しになり、 「『夕べから六条院に仕えておりまして、たった今帰ったところだ』と伝えよ」 と小声で伝授なさいます。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
April 12, 2017 03:28:32 PM
|