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私訳・源氏物語

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January 5, 2018
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カテゴリ:源氏物語
お亡くなりになりましたのは八月十四日で、葬送は十五日の暁でした。

陽はたいそう華やかに昇り、お袖の涙も野辺の朝露も隠れる隈さえなくて、
儚い世の中をお思い続けになりますとひどく厭わしく、悲しみも辛く、

『今は遅れるとしてもこの世にいつまで生きられるであろうか。
この悲しみを紛らわせるためにも、出家の本意を遂げたいものだ』

とお考えになるのですが、
「何と情けない」と世間から誹りを受けるのも口惜しく、
服喪の期間をすごしてからとお思いになるにつけても
堪えていらした悲しみがお胸にこみ上げてひどく辛いのでした。

大将の君も二条院から退出なさらず、四十九日の御忌に籠っていらっしゃいます。

明け暮れ父・院の御側ちかくにお仕えしながら、
お気の毒なほど悲嘆の激しい御様子を『お道理』と悲しく拝見しては、
あれこれお慰め申し上げます。

風が野分のようにひどく吹く夕暮れに、大将は昔のことをお思い出しになって、

『野分の朝、ほのかに拝見したものだが』

と、懐かしくお思いになったものですが、
この度はまたご臨終の際の夢心地でお顔を拝見したことなどを
人知れず思い続けていらっしゃいますと、耐えがたいほど悲しくなるのです。

それでも人目を憚って、
「阿弥陀仏、阿弥陀仏」
と唱えながら、数える数珠に涙の玉を紛らわせていらっしゃいます。

いにしへの 秋の夕の恋しきに 今はと見えし あけぐれの夢

(昔、秋の夕べのお姿を忘れることができず恋しく思っておりましたのに、
今はの際にあの薄暗がりで拝見したお姿が夢のようで)」

と、その名残までが辛いのでした。

尊い僧どもにはお作法通りの御念仏はもとより、法華経なども読経させます。

何事につけしみじみと悲しいのでした。





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最終更新日  January 5, 2018 05:22:44 PM
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