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私訳・源氏物語

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August 31, 2021
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カテゴリ:源氏物語
阿闍梨は多くを語らずに座を立ちました。

常不軽(じょうふきょう)を勤行する僧たちは、
このあたりの村や里から京まで歩いて回るのでしたが、
寒い暁の嵐に難儀しながら阿闍梨のお勤めしている辺りを訪ねて、
山荘の中門の下で額づくのでした。

回向(えこう)の最後に唱える文句がたいそう尊いのです。

仏道に深く帰依する薫中納言も、涙を堪えることがおできになりません。

中君は姉君を案じて少しいざり出ていらした気配がしますので、
中納言は居住まいをただしなされて、

「不軽の声をどのようにお聞きになりましたか。
重々しい祈祷には行われないものですが、いかにも尊く聞こえましたね。

霜さゆる みぎはの千鳥うちわびて なく音かなしき 朝ぼらけかな

(冷たい霜の凍てつく朝に、
水辺の千鳥が寒さに耐えかねて侘しい声でないていますね。
まるで常不軽の法師のように)」

と、話し言葉のように申し上げます。

この方は、つれない宮のご様子にも似通うていらして、
つい比べてしまうのですが、直接お返事はしにくいので
弁を介してお返事をなさいます。

「暁の 霜うちはらひなく千鳥 もの思ふ人の 心をや知る

(羽に降りた暁の霜を払って悲しげになく千鳥も、
私の哀しみの心を知っているでしょうか)」

若い中君には不似合いな代理人ではあるのですが、
それとない風情があるのです。中納言は、

『このように何気ない和歌のやり取りでも、
大君はいかにも控えめながら親しみ深く、
手ごたえのあるお返事をなさるお方なのに、
このまま死別してしまうならば、私はどうなってしまうのか』

と思い惑い給うのでした。

八宮が阿闍梨の夢に現れ給うたご様子を思い合わせますと、

『姫君たちのお気の毒なお身の上などを、
大空からどんなふうにご覧になっていらっしゃるかしら』

とたまらないお気持ちになり、かつて八宮がこもられた御寺にも追善の御誦経を、
またあちらこちらのお寺に、大君のご病気平癒の御祈祷に
使いをお立てになります。

朝廷にも私邸にもお暇請いをなさいまして、
神前の祭や陰陽道の祓いなど万事手をお尽くしになるのですが、
何かの祟りのようなご病気ではありませんので、何の効果もないのでした。





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最終更新日  August 31, 2021 11:44:58 AM
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