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カテゴリ:源氏物語
格子を上げたまま眠れずに夜をお明かしになって、
朝顔の花が開くのを一人でご覧になるのでした。 お側に仕える者を召して、 「三条の宮邸に参るから、目立たない車を出させよ」 とお命じになります。従者は、 「宮さまは昨日から内裏におわします。 供人が夕べ御車を引いて帰って参りましたので」 と申します。 「構わぬ。対のおん方がご病気でいらっしゃるから、 その見舞いに参る。 今日は私が参内する日だから、日が高くならぬうちに」 と仰せになり直衣をお召しになります。 出かけるついでにお庭に下りて花の中にお立ちになるご様子も、 特に風流に振る舞わなくともあでやかで風雅で、 不思議なほど優美でいらして、こちらが恥ずかしくなるほどなのです。 ひどく気取った色好みどもとは比べようもありません。 朝顔を取ろうとお引き寄せになりますと、露がほろほろとたいそうこぼれます。 「けさの間の 色にやめでむおく露の 消えぬにかゝる 花と見るみる (露の消えぬわずかな間に咲く、はかなく脆い花と知りながら、 その色香にどうして心惹かれるのであろう) 何と愚かなことよ」 と独り言ちながら花を折って持っていらっしゃいます。 なまめき立っている女郎花には目を止めずお立ち出でになります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
April 27, 2022 08:09:21 PM
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