シューベルト「即興曲集」
私が好んで聴くCDは、ツィマーマン演奏のものです。ラフマニP協奏曲2番で魅せた小澤指揮の名盤も記憶も新しいですが、この即興曲集も、きっと彼の名演奏として代表されるものでしょう。様々な表情を併せ持つこのピアノ曲集が、彼の手のうちでキリリと引き締まり、確固たる1本の芯を通されているかのようです。躍動感も持ち合わせた演奏で、澄んだ音で流麗に転がり、歯切れ良く打鍵が欲しいトコロでは、気持ち良いくらいに鳴らされています。聴いていて安心して身を委ねられる。情緒も破綻せずに節度を保っている。技巧と表現を兼ね備えたツィマーマンの面目躍如と言ったところでしょうか。^^シューベルトを聞くと、仄かに暗さが感じてしまうのが常なのですが、この演奏にはそれが見当たりません。そういう意味でシューベルト的かと問われると、そのイメージからは、少しかけ離れるかもしれませんが、これはこれでツィマーマンの明確なアプローチが感じられ、耳に入れる時もすんなりと染み込んできます。現在の自分には、とても心地よい「即興曲集」です。