瀋陽で路頭に迷う
午前1時到着国内移動だから入国審査は無いが、荷物が出ない。コンベヤが動き始めたのが1時半になる頃待っている人の間からも中国語で不満めいた響きが出始めていました。荷物を持って出ると、すぐにTaxi, Taxiと擦り寄って来る。無視して空港ビルから出ると、やっとついて来なくなった。ちょうど寒気が来ていて、翌朝の予報はマイナス3℃との表示。舗道のバス乗り場に行くと係の男が三人いて「瀋陽市内」とどうも中国語で呼び掛けているらしい15元だから安いのだが、「市内」が自分のホテルに便利かどうかはわからない乗り場に並んで待っているTaxiなら大丈夫かな。パトカーも傍に待機しているから、全うなドライバーだろう。「イーパイ」とハンドルを持ったまま振り向いて言う坊主頭の髪が伸びたドライバー。百元は日本円では1300円くらいだから、中国人の生活感覚からは日本人の1万円くらいの重みです。吹っ掛けられているかな、と思ったが「OK」と私。走ってみると以外に空港から距離があり、これはまともな金額だなとわかったところで少し安心できました。運転手は振り向いて煙草は?と差し出してくれる。中国では会議の席でも煙草をみんなにバラ撒いてくれ、これは一種の親しみの表現なのです。真っ黒な闇の中に高速の照明だけが並んで見え、家の窓も明かりは消えています。「どこの国から来たの?」雰囲気でそう訊いているのがわかる。「リーベン」「トンジン?」「いいや、東京じゃなくて……カンタオ」広島のことは、たぶんそういう発音になるだろうと、ちょっと考えて言ってみたのです。「カンタオ?……」ちょっと考えて運転手はわかった様子。Crowne Plaza Hotelは以前Inter Continental Hotelだったものが買収されたらしい。タクシーの運転手がホテルロビーに入ってみて、ここらしい、と言うので入ってみると、ロビー内の掲示にCrowne Plazaの文字が見えました。チェックインしようとすると、ここではない、とカウンターのお兄さん。「え?」でもこのホテルの裏側で、歩いて5分とか。午前2時を回った裏道を、大きな旅行鞄を引きずって歩くのは、簡単に狙われそうで気持ち悪い。言われたように、歩くと大通り側に出たが、ホテルの看板は見えない。ホテルならたいてい建物の上部にネオンか、歩道から低い位置に見える看板があるのに、それが無い。KFCが開いていたので、そこの女の子に尋ねるその子の書いてくれた図は、さっきの違うといわれたホテルの場所だった。私が首をかしげていると「教えてあげる」と外まで一緒に出てくれて、さっきの道を戻りかけるやっぱり違うなぁと、私は立ち止まってもう一度ホテルの予約の紙を眺める。そこに駐車場の管理人のような、コートを着た男の人がボックスオフィスから出てくる。予約の紙を見て「これはこっちだ、行ってあげよう」私の鞄を替わりに持ってくれた。女の子はすぐにKFCに戻ってしまって、お礼を言うひまもなかった。でも私の105円の古いボールペンを持ったままだったから、記念にはなったかも。KFCの前をもう一度歩き過ぎ、暫くすると、暗い中に入り口と、大きな”Clowne Plaza”という文字が壁に見えて、本当に安心した。その男の人はロビーのカウンターまで荷物を運んでくれ「ここだよ」と言って外に戻って行った背中に向かって有難うと言いながら、いい国だな、と思う。