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カテゴリ:小説・ノベル
大江戸妖怪かわら版7のご紹介です。
本シリーズもいよいよ最終巻です。 今回は大江戸の面々の日常を描いた短編集です。 前巻の記事はこちら。 【3980円以上送料無料】【OPEN記念全品ポイント5倍】大江戸妖怪かわら版 7/香月日輪/〔著〕 【大江戸散歩】 八丁堀同心百雷、定町廻りす 狼面の同心百雷の日常を描いたお話です。 下級役人であるがゆえにままならないことも多いですが、それゆえ町民に寄り添った彼の生き方は温かみを感じました。 散れば咲き、散れば咲きして桜丸 とある少女が、時折通りかかる桜丸に恋をしました。 声をかける勇気もなく、せめてもと桜丸の姿を絵師に描いてもらい、それを眺める日々を送っていました。 ある日、ふと気づくと彼女はとある公園に立っていました。 そして向こうから歩いてくるのは、桜丸? 不思議でロマンチックで、そして切ないお話でした。 風流大江戸雀 かわら版屋の記者雀の日常を描いた話です。 この話は杉浦日向子氏の江戸川柳漫画「風流江戸雀」からヒントを得て書いたそうです。 風流江戸雀は古川柳「誹風柳多留」から選んだ佳句をもとに、江戸っ子の日常を描いた作品だそうです。 この話も古川柳から大江戸っ子の生活を描きました。 細々としたエピソードに川柳を織り交ぜた手法が面白いお話でした。 渡来人は自転車を駆る 大欧州からやって来て大江戸に居ついた猫の妖怪ポー。 雀の同僚であり何かと手助けしてくれる彼の日常を描いた話です。 最後は泣ける展開でした。 大人なポーの振る舞いも良いですね。 虹の水面に映る夢にて候 釣りに出かけた鬼火の旦那は、一人の少年と出会います。 少年は高名な武家の子息で、勉学と武芸に励むだけの日々に嫌気がさして屋敷を抜け出して来たのでした。 そこで旦那は雀を呼び、若様を連れて江戸の町を案内させることにしました。 雀は若様に色々な話をします。 自由と自分勝手は全然違うんだということ、自分はもっとああしろこうしろと言われたかった、悪いことをしても叱られないのがどんなに悲しいことか…… 雀の言葉は、自分の生活を窮屈に感じていた若様の心に新しい風を吹かせました。 この話は、雀の成長物語の集大成のように思います。 すさんだ生活をしていた雀が大江戸で生き直すことができたことを改めて感じさせるお話でした。 終章(えぴろおぐ) 雀が鬼火の旦那の庵を訪ねてくつろいでいる日常を描いた話です。 ごくごく普通の、小説の書き出しのような何ということのないシーン。 でもそれがこのシリーズを体現していて、とても感慨深く感じました。 この物語は世界がひっくり返るような大事件が起こるわけではありません。 事件が起こるにしても、穏やかな日常のシーンが大半です。 ですがこうした日常の連続が、ひいては人生を作っていくのではないでしょうか。 穏やかで人情深い妖怪たちの姿は、忙しい生活の中で私たちが忘れてしまいがちなことを思い出させてくれるように思いました。 ページ数もテンポも手ごろで読みやすい作品ですので、気軽に楽しんでみてはいかがでしょうか。 作品全体の感想はこちら。 よかったらクリックお願いします。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.02.11 20:04:42
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