4494185 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

システムエンジニアの晴耕雨読

システムエンジニアの晴耕雨読

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2007.03.04
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類
ティム・バーナーズ-リー(Tim Berners-Lee)
「Webの創成 - World Wide Webはいかにして生まれどこに向かうのか」


高橋徹さんの訳。


 読み終えて、すごく心があったかくなる本です。


 この本、適齢期になった「ハイパーテキスト」と「インターネット」を結婚させ、

 HTTP、URI、HTMLによって、

 Webを最初に作られたティム・バーナーズ-リーさんの本です。


 インターネットそのものは、1970年代にはあったものの、

 現在のようなブラウザを利用して、ハイパーテキスト上のリンクをクリックするしかけを

 作り、World Wide Webと名づけたこと。


 この研究は、米国でも、コンピュータの専門家によるものではなかった。

 スイス、ジュネーブにある高エネルギー物理学共同研究機関CERNの研究員として、
バラバラになった研究資料を、共同利用するために検索可能にするためのしくみとして、
現在ならCERN内部のイントラネット上の様々なサーバー群を検索する「Enquire」という
ソフトを開発されたこと。
 しかも、この開発作業も、CERNの本業とは直接関係ないため、いつ中止の勧告を
受けないかビクビクしながら、非公式に進めていたこと。

 そのためなのでしょうが・・ティムさん自身、のちに博士号を取得することもなく、
また、IT起業家のような富を得ることもないですが・・・家族とのつつましいけれど
幸せな生活の様子が描かれています。

 「私がWebから多額の金銭を得なかったことに動揺していないかと尋ねる人がたまにいる。
  ・・たいがいの場合、そういった人々はアメリカ人で、ヨーロッパ人ではない。
  私をいらつかせるのは、人間の価値は、その人物がいかに重要な地位にあって経済的に
  成功しているかにあり、それは金銭の額によって測定できるという恐ろしい考えなのである。
  この考えは、世界中の科学技術の場面において新たな飛躍を求めて知見を展開している
  研究者に対する軽蔑を意味している。
  私の育った環境では、根幹をなしていたのは、金銭的な報酬についてはそこそこにし、
  何よりも自分が本当にやりたいことを優先するという価値観であった。・・」


 CERNが欧州におけるWebの拠点から撤退するのを機に、
米国のMITへ移り、以後、W3C(World Wide Web Consortium)の立上げから関わり、
Webを管理することを志向するいかなる機構や企業の試みにも抵抗しながら、
Web普及のためのルール作りの一翼を担い続けていらっしゃいます。

 「Webは技術的な創造物というよりは社会的な創造物である。
  私はWebを技術的なおもちゃではなく、人々の共同作業の手助けとなるような
  社会的効果を生むものとして設計した。
  Webの最終目標は、世界中に散らばっている私たちが織りなしている網の目のような
  存在を支援し、改善することである。」

  
 ただWebの歴史が、善意によって順風満帆に進んだわけではなく、みなさんご存知のように、

 マイクロソフトがOSにIEをバンドルして発売しようとし、独占禁止法で訴えられたこと・・
これは「媒体とコンテンツの分離」の観点からいうと、
 特定のブラウザを利用することによって、バイアスのかかった特定のポータルサーバーや
検索エンジンを利用させられてしまう危険性にもつながっていること。

 このことは、現在のグーグルの検索エンジン一人勝ちの危険さも示しています。


 最後に・・といっても、2001年時点の予測になりますが、
 Webによるコンピュータ同士の共同作業の実現を可能とする「Semantic Web(意味をもつWeb)」
を紹介されています。

 7年経った現在、XMLベースのWebサービスの利用、特に、BtoBの分野では
実現しつつあると思います。


 また、Webの世界観については、サラリとこう語る。
 
 「極端な見方をすれば、世界はもっぱら関係性だけからなるものであり、
  それ以外の何ものでもないと見ることが可能である。・・
  ある情報は、事実上は、それがどんな情報とどのように関係しているか、ということによってしか定義することはできない。意味には、それ以上の含意は事実上ほとんどないのである。
  関係の構造がすべてである。」

 だからこそ、関係性を担保するためのしかけが必要ということなのでしょう。

 これって、「差異の体系」・・「構造主義」そのもの。
 ティムさんから、こんな言葉が聞けるとはちょっとびっくりでした。

 
 
 「進化のおかげであるかどこかの精霊のおかげであるかは知らないが、
  人間はどうも「正しい」ことをしているときこそが一番面白いと感じるようにできているようである」
 
 ティムさん、本書を一貫して、人間と社会への善意を持っている点、
 共感しました。


<目次>
第1章 Enquire Within upon Everything/万物の探索 
第2章 Tangles,Links,Webs/もつれ、つながり、網の目
第3章 info.cern.ch/CERNのサーバ 
第4章 Protocols: Simple Rules for Global Systems/
 プロトコル-地球大のシステムのための単純なルール 
第5章 Going Global/地球大の世界へ 
第6章 Browsing/ブラウジング 
第7章 Changes/状況の変化 
第8章 Consortium/コンソーシアム 
第9章 Competition and Consensus/競争とコンセンサス 
第10章 Web of People/人々の網の目 
第11章 Privacy/プライバシー 
第12章 Mind to Mind/思考をつなぐ 
第13章 Machines and the Web/マシンとWeb 
第14章 Weaving the Web/Webの創成 





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007.03.04 19:42:34
コメント(4) | コメントを書く


PR

カレンダー

カテゴリ

日記/記事の投稿

コメント新着

 モンゴル鎌倉サムライ@ Re:佐藤優「自壊する帝国」(08/09) ルパン三世のマモーの正体。それはプロテ…
 toyopika@ Re:足立巻一「虹滅記」(06/18) 足立敬亭先生が逝去したことを知って悲し…
 背番号のないエース0829@ もし高校野球の女子マネージャー 『アルフィー「君が通り過ぎたあとに-Don…

お気に入りブログ

2024年5月の抱負。 New! みきまるファンドさん

くまんパパ  院政を… New! くまんパパさん

悪口を言う人は劣等… New! よびりん2004さん

nguoi di ngoai pho New! alex99さん

襲撃 BURNING DOG New! lavien10さん

どこまでもポジティ… New! 一緒がいいねさん

私にはよく効いてる… New! ハワももさん

イジらないで、長瀞… New! 風竜胆さん

キーワードサーチ

▼キーワード検索

フリーページ

サイド自由欄

設定されていません。

© Rakuten Group, Inc.