テーマ:海外生活(7771)
カテゴリ:フライブルク
Freiburg,Konviktstrasse posted by (C)solar08 フライブルク市の中心部にある歩行者ゾーンの東端に、コンヴィクト通りという小さなブティック街があります。 南北にたった三百メートルくらいつづく短い道ですから、通りというより横丁と呼ぶ方がぴったり。 ここももちろん歩行者天国で、バスもトラムも通りません。ウインドショッピングや散歩をする人ばかり。 この地区は百年余り前、フライブルクに建築ブームがおこったときに、職人さんが住んだいわゆる下町だそうです。 私がフライブルクに住み始めたころには、馬車の車輪が塀に飾られた家など、当時をしのばせる古い家がまだいくつか残っていました。 こうした古い時代の町並みを保存しつつ、老朽化した建物を改造して、この一画を新たにしようと、町の再開発計画が二十年ぐらい前に始まりました。 市がいったん建物を買い上げて、建物の改修に投資したい人々に売ったのです。 売るときの条件がおもしろいです。 まず、外壁や屋根の形はそのまま残して古い町並みを保つこと。つまりモダンすぎる建物への改造はご法度。 一方では、隣り合う建物は、同じ建設会社や建築家にデザインをさせてはならない。 これは、町並みが画一化するのをふせぐため。伝統的な町並みという共通したベースは保ちながらも、それぞれの家が個性を発揮するように、という配慮からです。 こうして再開発された結果が、上の写真のような横丁。 通りの上にかかっている植物は藤です。市の音頭で植えられ、それぞれの店が手入れをしているそうです。春にはきれいな藤の花のアーチが楽しめます。 通りには個性的なデザイナーの服を売る店、いかにもセレブなブランド物の店、ジュエリーの店、アンティークショップなどが並んでいます。 石畳(ハイヒールには向きません)にコツコツと音をたてて、馬車が走ってきてもおかしくないような、ノスタルジックな雰囲気があるところがステキ。 昨日は、日本からいらした視察客の方々といっしょに、この通りにあるカフェで、店の前にならべられたテーブルで、コーヒーを飲みました。 「ここは静かですねー」 「落ち着きますねー」 「ここでトイレ休憩してよかった」という感想をいただきました。 この通りと並行して、歩行者ゾーンを取り囲む環状道路があるのに、そこを走る車の音はまったく聞こえません。 その秘密は、この通りと環状道路との間にある四、五階建てパーキングハウス。ハウスの分厚いコンクリート壁が防音の働きをしてくれるのです。 「静かなだけじゃなくて、空気もいい。ガソリンの臭いがしないから、コーヒーを楽しめますよ。東京のオープンカフェは空気がくさくて」と一人のお客さんがおっしゃいました。 私はこれまでそんなこと、ちっとも気付きませんでした。 表参道のオープンカフェも好きなのですが、ガソリンの臭いを意識しなかったのは鈍感な証拠。 コンヴィクト通りでの、お気に入りはレザー製の服の店。 ここで売られるブルゾンやジャケットには二つとして同じものはありません。オーナーがレザーを買い入れ、オーナーの奥様がデザインして、近くの工房で縫われるのだそうです。 デザインはシンプルシックあり、斬新なものありと、いろいろです。 以前、ショウウインドウですっきりしたデザインのジャケットを見つけました。 手触りはシープスキンのようになめらか。でも、これは牛カーフなのだそうです。なめし方でこんなになめらかになるのだとか。 試着してみたら、案の定、袖が長すぎ、背幅もちょっと大きめ。ドイツでいつも経験することです(足だけじゃなくて、腕も短いから)。 そうしたら、オーナーが「すべて無料で直させます」と言ってくれ、オーダー服のように体にフィットするジャケットを、ふつうの値段で買うことができました。 友人たちからも、「大量生産のものとの質のちがいが一目でわかる」とほめられます。 オーナーは「いいものを見せてあげる」と言って、工房に私を招き入れると、漆黒のビロードのような「生地」を棚から出しました。 そっと触れると、絹のビロードのようです。 「これはスエード、世界で一番美しい黒のスエードだよ。これだけ薄ければ、ドレスができる。どこ製だと思う?」 「?」 「日本、日本。こんな黒より黒いスエードをつくれるのは日本のメーカーしかないの」 「知らなかったー!」 「でもね、直接日本から買うことはできないんだ。100m単位じゃなくちゃ売ってくれない。十メートルだけ買いたいなんて言ったら、けんもほろろに扱われちゃう。卸業者を通して買うしかない」 残念ながら、この世界一美しい黒のスエードをなめす日本の会社の名前は聞きだすことができませんでした。 このスエードがきっかけなのか、オーナーと奥様はいつか日本に旅行したいのだそうです。 「夢で終わっちゃうかなあ。日本語ができないと、迷子になってしまうようで、出かける勇気がないんだ」 「そんなー、駅名は全部ローマ字で書いてあるから大丈夫。あとは英語をゆーっくり話せば、なんとか通じるわよ。円安のうちに行ってらっしゃいよ」 「そうかなあ」 オーナーたちが早く決断しないうちに、円は高くなってしまいました。 このブティックは、シュヴァーベン門(Schwabentor)の側からコンヴィクト通りを入って、右側三軒目(いいかげんですまん!)ぐらいの店です。レザーの店は市内にたくさんありますが、質とデザインでこの店以上のはないと思っています。 フライブルクにお出かけのときは、たとえ何も買わなくても、ぜひコンヴィクト通りをブラブラしてみてください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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