ドイツの限界
ついにワールドカップが始まりました。残念ながら諸事情あってぼくはイタリアからTV観戦です。展開によっては、月末からドイツに乗り込むことも考えていますが、現時点では未定。 せっかくなので、期間中はこのブログも更新頻度を上げて、日々の雑感やイタリア関連の情報などを書き留めていこうかと思っています。ずっと、1エントリーに1枚は写真をつけるようにしていたのですが、ワールドカップ関連に関しては写真なし、テキストのみということでご勘弁を。ドイツ4-2コスタリカ――結果だけからするとドイツの楽勝のようにも見えますが、実際には全くそんなことはありませんでした。ハッピーエンドが確定したのは、残り3分というところで、フリングスの一か八かのロングシュートが絵に描いたように決まったおかげ。それまでは、いつ3-3になっても不思議ではない、見た目よりもずっと緊迫した試合でした。――3月にフィレンツェで見た時にも思ったことですが、ドイツには、オーソドックスな4-4-2の3ラインをコンパクトに保ち、高い位置からプレスをかけて行くという、モダンでスマートなサッカーは似合わないし向かないのではないでしょうか。新しいスタイルを持ち込もうというクリンスマンの気持ちもわからないではないですが、このメンバーだとテクニックと戦術の両面ででちょっと役者が不足。単純なクロスやロングボールを放り込んではがんがん走り込むという単調かつ執拗な攻撃で相手に音を上げさせる、かつてのストロングスタイルの方が、ずっと怖くて危険なサッカーができると思うのですが。古くさいサッカーだから悪いというわけじゃないんだし。――この試合で敵陣でのプレッシングが狙い通りに機能したのは、コスタリカがあまりにものんびりした攻撃しかできなかったからでしかありません。一旦中盤がかわされてしまうと、最終ラインはほとんどザル。高さはあっても、スピードと敏捷性に欠けるメッツェルダー、メルテザッカーのCBペアは、敵MFをヴァイタルエリアでフリーにした2回ともに、ワンチョペに軽く裏を取られていました。ラインを高く押し上げる、ハイリスクな戦い方を選びながら、オフサイドトラップを始めとするラインコントロールはあまりにアバウト。相手がブラジルやアルゼンチンやフランスやイタリアのFWなら、1試合に5,6回じゃ済まないと思います(3月のフィレンツェがそうだったように)。――攻撃に関しても、ロングボールをまったく使わず、最終ラインからパスをつなぎ、サイドを有効に使って攻撃を組み立てるという、ドイツらしくない洗練された戦術が基本。この試合は、相手が3-5-2でしかも両サイドハーフの守備が緩かったせいで(特に左のマルティネスは悲惨)、サイドでは常に2対1の数的優位を確保することができました。結果、面白いようにサイド深いところまでボールを運んでいたわけですが、いつもそう上手く行くとは限りません。前線の2トップはマークを外す動きが単純で、ちょっとレベルの高いDFは単なるクロスの放り込みでは、そう簡単にボールに触らせてくれないでしょう。――一方のコスタリカは、いい意味でも悪い意味でも、これ以上ないほど中米らしいチームでした。守備はひとことで言うと大雑把。3-5-2のDFラインはマークも球際の詰めも甘く、エリア内の競り合いでもフィジカルで圧倒されていました。致命的な場面が数回で済んだのは、人数だけはかけているのと、ドイツのFWがやや単調な動きしかできないせいでしかありません。――攻撃は、速攻という言葉が存在しない世界からやってきたような、のんびりしたパス回しによる組み立てが主体。中盤から上はみんな3タッチ、4タッチしないとボールを離さない割に、1対1で突っかけるわけでもないという、不思議なサッカーです。何となく敵陣までボールを運んだ後、フィニッシュはもっぱらワンチョペへのスルーパス。でも、1試合に3、4本通せば1点、2点決めてくれるわけで、こういう一芸に秀でたストライカーがいるというのは大きいですね。――でも、中米、南米のようにハーフウェイラインを越えるまではスペースを与えてくれる相手ならそれでもいいのでしょうが、このドイツのように高い位置からフィジカルにものを言わせてプレスをかけてくる相手だと、最終ラインから中盤につなぐ前に追い詰められて、ぽろぽろとボールを奪われてしまいます。失点は4点目を除いて全部そういうパターンから。最終ラインと中盤の間では自由にボールを持たせてもらえるサッカーに慣れているので、自陣で奪われると心の準備ができておらず、あっさりやられてしまいます。つか、やられすぎ。――ドイツは、グループリーグは抜けるんでしょうが、そこから先はあまり期待できそうになし。R16でスウェーデンに敗退、と予想しておきます。ポーランド0-2エクアドル――ポーランドはテクニックもフィジカルも戦術も、すべてが凡庸、まったく個性のない灰色のチームでした。初戦を落として次の相手がドイツ。すでに崖っぷちです。――エクアドルは、南米の小国らしい働き者揃いの謙虚なチーム。けっこうソリッドです。ロングスローで先制ゴールを呼んだ4番の右WBデラクルスは、4年前に某トラパットーニが、その攻め上がりを怖れるあまり、大会直前になってシステムを3-4-1-2から4-4-2に変更したという、イタリアにとっては思い出深いプレーヤーです。そのとばっちりを喰らってスタメン落ちしたのは、絶好調だったデル・ピエーロでした。今日のアズーリ――おかげさまでイタリアは、ザンブロッタ(肉離れ)に続いて、ネスタ(内転筋痛)とガットゥーゾ(打撲による肉離れ)まで戦線離脱。足首の骨折から復帰したトッティはまだコンディションが上がらず、その穴を埋めるはずのデル・ピエーロさんも、4年前とは打って変わって不振にあえぎ、せっかくのチャンスなのにスタメン落ちが濃厚(またかよ)と、12日のガーナ戦を前に、かなり困った状況になっています。下手すると当初の構想からレギュラー4人落ちですからね。「あと2日間練習を見て、前日にスタメンを決める」と語るリッピ監督は、まだシステムに関しても迷っている模様。あるいは隠してるだけなのかもしれませんが。◆ ◆ ◆ いつもこんなに長々とは書かないと思いますが、基本的なノリはこういう感じで、行けるところまで行きたいと思っています。よろしければご愛読のほどを。□