カテゴリ:BLEACH SS
日曜、スーパーの大売り出しに行ったら、井上と出くわした。
どうせ近くに住んでいるので、二人分の荷物を持った。 「ありがと茶渡君!後でおかず持っていくね」 「いや、いい……」 どうせたいした量ではない。 「あ、露草だ!露草って、秋にも咲いているんだね」 「ム」 住宅街には、意外と色々な花が咲いている。しかし露草は比較的珍しい。 「露草って、なんとなく石田君っぽい感じがする」 「……石田?」 「うん。でもって、たんぽぽが黒崎君。どう?」 どうと言われても……俺じゃなく、当人たちがどう思うかという問題ではないだろうか。 どっちも可憐だし、雑草だし。 「どちらも外野の花か」 「うん」 井上は、感覚は他人とずれているが、馬鹿ではない。どんなに突拍子なく思えても、それなりの理由があるのだろう。 「……茶渡君、夜、用事ある?」 井上の部屋の玄関の前で聞かれた。 「いや、ない」 「じゃあ今夜はお鍋にしない?石田君ちで!」 「ああ」 井上は石田を構いたがる。恐らく接触度は一護相手より高いだろう。 だから時に、約束もなしに押しかけていこうなどと思いつく。 一護は深く根を張る。何処まで種子を飛ばしても、自身はけして揺らがない。 石田はすぐに花を閉じてしまう。閉じてしまえば俺たちは多分見つけられない。 俺たちの指先には、既に石田の色が滲んでいるのに。 だから井上も俺も、石田から目を離さない。 その晩、石田は呆れ顔で俺たちを迎えた。 追い返されなかったことより、石田がまだそこにいることにほっとした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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