カテゴリ:BLEACH SS
寒い。
暖冬だろうがなんだろうが、特別ブルジョワでもない学校の冬はやはり寒い。 あまりの寒さに、父の勧める学校に行くべきだったかとちらりと考え、石田は慌てて頭を振った。 二時間目は体育がある。普通冬に体育など真っ平だろうが、石田は一応鍛えているので、動いている間は代謝もよくそれなりに体が温かいのでただ座って授業を受けるより楽だったりする。 しかし寒い……。 親の金で使い捨てカイロを買っている級友たちがなんだか憎い。 「石田、カイロ貸すか?」 「いいよ。放っておいてくれ」 「でもお前指先が震えてんぜ」 「ム。顔色も良くない」 「おはようー!」 白い息を吐きながら、それでも笑顔で井上が教室に飛び込んできた。 「おはよう織姫」 「おはよう鈴ちゃん、今朝も寒いね」 入り口付近にいた国枝と言葉を交わすと、コートを脱ぎロッカーに入れる。 「……女の子ってよくあれで寒くないよね」 「まあな」 校則スレスレのミニスカートに靴下一枚だから、足は殆ど剥き出しになる。女子と話すことが多い石田だが、これだけは何度説明されても理解できない。 黒崎については、「こんな体に悪い格好妹たちには絶対許さねえ」と考えている。 「うっわーさむーい」 それでも井上は自分の体を抱くようにして、三人のほうに駆け寄ってきた。 「おはよ」 「おお」 「おはよう井上さん」 「ム」 「本当今日は寒いよね。あ、そうだ」 井上はぽん、と手を叩いた。 「黒崎君、石田君、茶渡君借りていい?」 「……いいけど」 「当人に聞けよ」 井上はチャドの大きな手を取ると自分の指と絡ませる。 「わー、やっぱりあったかい」 弾んだ声に教室の空気がぴしり、と軋むが、 「石田君もやったら?あったかくて気持ちいいよ」 「い、いや、僕はいいよ」 「え、でも顔真っ白だよ?」 言いながらチャドの両手を自分の両頬に当てる。 こんなことをしておいて、誘惑の意図も何も無いのだから恐ろしい。 まあチャドは見るからに基礎体温が高そうで、湯たんぽ替りには最適だが。 周囲の男子(若干名除く)は少々羨ましげにその風景を見ている。 が。 「あー!このでくの坊ヒメになにしてんのよ!」 本庄は教室に入るなり大声で叫んだ。(今回ばかりは無理も無い) 「おはよう千鶴ちゃん!あのね、寒いから茶渡君に体温わけて貰ってるの」 「ほー……」 思考回路は故障著しいが知能は低くない本庄は、それで一応状況が飲み込めたようだが、やはり面白くなさそうな顔で二人を見ている。 「……あたしも寒いなー?」 「いやそんだけ頭に血が上ったら寒くないだろ」 黒崎の突っ込みを無視しながらにじり寄る。 「あたしも体温貰っていい?」 「あ、ああ……」 井上はいいが本庄は駄目とは言えない。 「じゃ、片手……」 を差し出した織姫を無視し、本庄は氷のような両掌をチャドの首に巻きつけた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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