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「シンタロー、その……、相談があるんだが」
「おー。何だ?」 どこか決まり悪そうな総帥補佐に、総帥は淡々と答えた。キンタローがこんな口調で話しかけてくるときは、(普通と逆に)たわいも無い悩みだと経験で知っている。 「実は昨日、俺が、この俺が、書類で指を切ってな」 「ああ、結構痛いよな、紙の傷って。……で?」 いつもどおり無表情に、しかし確かに困惑を秘めた様子で、 「グンマが、俺の、いいか、俺の指を舐めたんだ」 「あー……」 シンタローはだるそうに眉を顰めた。 「変態ドクターの影響だな、そりゃあ。で、んなことしたらかえって傷に黴菌が入るって教えてやったのか?」 「ああ……」 「で?泣かれた?」 「いや。もうしないと言っていた」 「ならいいじゃねえか」 「いやしかし、グンマは良かれと思ってしたわけだし、こんな微少な傷に唾液が入ったとて破傷風にもならない、不快かといわれればそうでもなく、指を舐められるという経験自体初めてだ、次に指を傷つけるのはいつになるかわからないし、俺から、俺の方からもうしないよう働きかけたのに、こちらから求めるのはどんなものか、グンマはどう思うか、いやしかし……」 うだうだと続く繰言に、従兄弟はため息をつく。 「一言で言え」 「だからグンマに指を舐められるのは嫌ではない、いいか、俺は嫌ではないと」 「……とっとと仕事にもどれー!」 (06年4月16日 前日記より) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年07月16日 17時07分00秒
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