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カテゴリ:Book Review
「プリズン・ガール-アメリカ女子刑務所での22か月-」(有村朋美、ポプラ社)を読む。

桐山瑠衣さん(最近このブログでも頻出なワード;次のテストに出ます!)のツイートに触発されて、普段であればまず手にしないタイプの本を久しぶりに選んでみた(ツイート見てそのまま地元の図書館の蔵書検索をかけてみたら見つかったので)。私は他人の家の冷蔵庫を覗く悪趣味はないが、他人の家の本棚を覗くというもっと悪い趣味はある。好きな有名人がどんな本を好きで読んでいるかというのは昔から気になるし、実際そうやって好きになった作家も多い。

そんな中でも本書は異作。副題の通り、作者はニューヨーク在住中に付き合っていた彼氏がロシアン・マフィアで、その巻き添えを食う形で逮捕・収監された経験があり、本書はその実録である。いかにも私が読まなさそうで、女性が好きそうな(と言ったら語弊があるかも知れないが)1冊ではある。

本作を読んでいてしばしば判らなくなったのは…囚人はホントにみんな悪人に過ぎないのか、ということだ。勿論中には大量殺人犯などのどう考えても許せない囚人も出てくるが、多くの囚人(主に著者と同じくドラッグ絡みで収監されている、白人以外の人種の人)は、犯罪の片棒を担がされただけだったり、動機の面でも子供を養育するのにお金が必要で他に手段がなかったからドラッグ犯罪に手を染めただったりする人が多い。加えて(あくまで筆者の目を通しての話だが)、実際のところ彼女たちは刑務所内で他の囚人の信頼を勝ち得ていたり、良き友人同士であったり、人として周りの人を惹きつける何かを持っている人が多かったりする。勿論それで犯罪が許されるわけではないが。

あと感じたのは、黒人の囚人の割合が高いことについて。勿論黒人の犯罪率・犯罪傾向がそもそも高いなどということはなく、黒人→高給の仕事に就けない→子供の教育水準が低いまま→犯罪に走るしかない、という歪んだ社会構造をずーっとほったらかしにしてきたアメリカの国・政権にも問題がある。ましてあのバカ前大統領の白人優位政策が正しいわけなどない、というのは誰でも頭で考えれば判る話であるが、本書のように経験者の筆で語られる事実は重い。有村さんの言を借りれば、刑務所は自由の国アメリカの「最低・最悪」の一面なのである。

話が逸れてしかも長くなりそうだが…吹けば飛ぶような歴史しかないアメリカ史は黒人差別の歴史といってもいいだろう(これは本書と関係ない元々の私見)。例えば、

1862年:リンカーンの奴隷解放宣言
1963年:マーティン・ルーサー・キング・Jr.の「I have a dream」speech

そして昨今の「BlackLivesMatter」運動と、この国はいつまで同じことを繰り返すんだろうと思ってしまう(別に「この国」に限った話ではない。世の中全体として差別がなくなる方向に進んでいるのだろうか?)。

話を戻して…アメリカ女子刑務所の実態についてもいろいろ驚かされる。筆者はまずオフィサーのミスによって収監時も出所時もID確認をされていなかったり、持ち込み可能な現金が持ち込めなかったり。あとは司法システムとしての司法取引。取引に応じて無罪になった多数の者が少数の者に全ての責任をなすりつけて彼女たちだけ収監、なんてことも。ことドラッグに関しては、末端の売人を挙げるより組織ごと解体させることが優先という理屈も判らなくはないが、犯罪者に最低限の刑罰すら与えない司法取引って何、って気になる。減刑ならともかく免責っておかしくないか?

まだいろいろ書き足りないくらい本書は多くのことを教えてくれる。それは普通の人が普通に生活していたら絶対に見ることのない世界についてのことであるけれど、普通の世界と紙一重隔てたところに間違いなく存在する世界。特に黒人にとっては、家族や親類・友人の誰かが収監されているというのは「当たり前」で、刑務所というのは学校と同程度の存在だという筆者の言は非常に重い。

最後に、印象的だった箇所を引用させてもらう。

「送った荷物がドラッグだなんて知らなかった」という私の反論も、「あなたが中身を知らなかったという事実を証明できる方法がない」と却下された。

実際、彼女たちの訴えを聞くかぎりにおいては、本当に不当な逮捕、一方的な判決だなと思わされることが多かった。恋人や友人や知りあい、取引き相手がドラッグ犯罪者だっただけで、同じような罪にされてしまうのは、やっぱり理不尽すぎる。私自身そうだったから、そう思ってしまう面も強いのかもしれないけれど。

人にものを教えるなんて、まさか自分がするとは思ってもみなかった。教えられたのは私のほうだ。それも、どんな学校や会社でも決して教えてくれないことを。

人種差別も、民族差別も、全部最低だ。
やられた者の立場にならないと、本当の痛みはわからない。





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Last updated  2021.02.16 16:38:16
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