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想い出は心の宝石箱に。。。

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2014.11.08
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                               第十二章

 

 

   だんだんと遠ざかる眼下の景色を、黒田はぼんやりと機内の窓から眺めていた。

     冴子は今頃、どうしているのだろうか?何故あの時、< 絶対に別れない! >と、

     ひとこと言えなかったのだろうか?



   許されぬ恋によって夫の責めにあい、一人で苦しみ悩んでいた冴子。

   彼女をそこまで追い詰めた黒田の自責の念が、喉元まで出かかった
その言葉を、

     押し止めたのだった。

           

                        




   冴子のいない、異国でのこれからの人生を考えると、孤独感と虚無感に
襲われた。

     シートを 倒しながら目を閉じた時、


   ( えへへへ・・・黒さん、ついてきちゃったよ。)


     と、後部座席から明るい声が聞こえた。冴子が笑いながら、手をふって
通路に立って

     いる。


 

 

                      Heathrow.view.arp.jpg

                    


   急降下する機体は、雲間を抜けると緑に囲まれた、ヒースロー空港に
着陸した。

     小雨に煙るロンドンは、肌寒く感じられる。スーツケースが出てくるのを待っている

     旅客の中に、冴子の姿を黒田は追い求めた。



     機内での冴子の声と姿は、やはり幻影だったのか? それとも、


     ( やっぱ、黒さん・・悪いけど帰る。)


     と言って、日本にそのまま戻ってしまったのだろうか?


    家族と母国を捨て、自分の後を追ってくるなど、所詮<小説の世界の
出来ごと>と

      納得させる自分が、黒田は悲しかった。


    入国審査を終え、ロビーに出ると


   ( ARE YOU DR.KURODA ? )

  
   と、ブロンドの女性が近づいてきた。

 

  

      T5 Air side.JPG

    

         


 

     いちど亀裂の入った夫婦関係は、もはや修復不可能だった。

     というより、冴子には修復する気持ちが失せていた。子供たちへの愛だけがなんとか

     冴子を支えている。


            
   ある日、夫の背広のポケットの中をクリーニングに、出すために検めて
いると、秋保

     温泉の領収書が出てきた。二名宿泊の明細書と共に。その日付は、東京で展示会がある

     からとして、夫が一泊二日の出張で家をあけた日である。

   夫の浮気が発覚しても、いまさら嫉妬心もわかなかった。むしろ、
婚姻関係の維持は、

     これ以上無意味であると、冴子は強く感じた。

 

 

      生理が二ケ月ほど、冴子に訪れていない。

      夫との性関係はもはやないので、もし妊娠の可能性があるとすれば、黒田との最後の

      愛の結晶としか考えられない。このことがパンドラの箱を開け、黒田への想いをまた

      激しく、再燃させたのであった。妊娠を夫に知られる前に、離婚を成立させなくては・・・

 

 

                       




    黒田の子を身籠った事が確認され、冴子は離婚に向けて家裁の
調停を急いだ。

      離婚そのものには夫も同意していたが、二人の子供の親権を巡って、両者が一歩も

      譲らなかった。

      結局、桃華を夫が、梨華を冴子が養育する事で、決着をみた。

    桃華を手放す事はとても辛かったが、愛する人の命が自分に宿り、梨華と共に

      これからの人生を生きる喜びの方が勝った。

 


      子供を連れて実家に戻ると、両親は娘の不幸を嘆き悲しんだ。しかし、日が経つに

      つれ、娘と孫に囲まれた活を、むしろ喜んでいるような節がみられた。


    離婚によって、楔から解き離れた冴子は、お腹の子の成長と共に、黒田に
逢いたいとの

      想いを、抑える事が出来なくなっていた。

      冴子は梨華を連れて、ロンドンへと旅立つ。


         つづく~  いぬ    いぬ

 

 

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Last updated  2014.11.08 23:57:41
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