『学術小説 外骨という人がいた!』 赤瀬川原平著 (ちくま文庫)
明治時代を中心に「滑稽新聞」や「スコブル」などの新聞雑誌を発刊し、卓越した風刺と反骨精神、それに絵・言葉遊びなどのユーモア精神を紙面で発揮し続けた宮武外骨(本名です)。この本は、ある日古書店でガイコツの雑誌を手にしてその魅力にとりつかれた赤瀬川氏が、その可笑しさ、トンガリ具合、シツコサや不屈っぷりを、豊富な現物記事や図案・写真を用いて解説しているものです。1985年に出版された本なので、80's独特のやや軽めの展開や文体が多少気になるものの、それを補って余りある充実の内容となっています。外骨さんはなによりエネルギッシュ。人を食っていて過剰なほど遊び心があって、でも不当な権力行使や制度に対してはトコトン糾弾する。しかも極上な風刺を効かせつつ。とはいえ時代は明治。今とは比べようのない強権体制です。発禁・罰金刑は当たり前、投獄も4回ほど。しかしガイコツ、めげません。それらも格好のネタとして記事を書き続けていくさまは痛快であります。引用されている当時の記事はもちろん旧字体で組まれているし、活字も小さくて正直読みづらいんだけど、それがかえって可笑しみを増しているようにも感じられます。小説と違い、ある意味使い捨て文学ともいえる新聞や雑誌の世界で、今なお関心を持たれる外骨の刊行物の普遍性や新鮮さもすごいけど、当時の人々がこれらを読んで実際どのような反応を示していたのか、赤瀬川氏同様気になるところです。
宮武外骨や滑稽新聞という名前や、外骨が蒐集した風変わりな絵葉書コレクションのことはなんとなく知っていたけど・・・今まで読まなかったのが少々悔やまれます。この本以外にも伝記その他関連する書籍はいろいろあるようですが、取っつきやすさや楽しさからいったら本書が最適な気がします。タイトルについてる「学術小説」というのもちょっとパロディっぽい響き。