姥捨ての街
数日前のこと夜遅くに帰宅すると、何度か顔を合わせたことがある女性がいた母の知り合いの方である話によると、その年配の女性は、一人息子の嫁と言い争いをして、家を飛び出してしまったところが、家を出たものの、行く当てがなく、母を頼ってきたとのこと母を通して、以前から、嫁姑の関係がうまくいっていないことは聞かされていた家を飛び出すとは、よほどのことなのだろうこちらとしては、お姑さんの言い分しか聞いていないので、なんともいいようがないが、その話では、嫁の自分勝手な振る舞いが我慢できないのだというまったく家庭を顧みない嫁は家事を放棄見るに見かねて、お姑さんは、自分も仕事ある身でありながら、家事をこなしてきた嫁には何度も注意するのだが、まったく聞く耳を持たない自分の息子に言っても、のらりくらりとかわすだけそんな生活が続いたなかで、嫁と激しく衝突し、今回の家出ということになったしかし、勢いあまって飛び出したものの、さすがに我が家に幾日もお世話になる訳にはいかないというので、一晩だけ泊まると、その後は知人宅を転々としているようだっただが、そんな生活も長続きはしないし、一向に話の解決にはならないそこで、相談を受けていた我が母は、別居を提案したそして、その家賃は、息子夫婦に出させるという目論見そもそも、嫁が姑との同居を嫌がっているのだから、そのぐらいのことをするのは当然だろうこうして一家は話し合いの場を持ったのだが、結果は最悪の形を迎えることとなった一緒には暮らせないしかし、新居の家賃は一切負担しない自分で自由にやってくれ…それが、息子夫婦からの答えだった初老の女性のパート勤めの稼ぎなど、たかが知れているそんな給金で今更家を出されて、これから一人で生活していけるわけがないそれを分かっていながら、自分の母親に対してなんの情愛も見せない返答を平気でする息子と、その嫁その話を聞いた母は、他人の家庭の事でありながら憤りを感じ、行き場のない怒りに震えた結局、行き場を失ったその女性は、我が家で面倒見ることになった空いている部屋があるので、そこで暮らしてもらうのである勿論、僅かばかりではあるが、毎月お金はいただく母はこの事に関して、自分に承諾を求めてきたはっきり言えば、赤の他人と暮らすというのは、お互いが気を遣うだろうだから、あまり気が進む話ではないしかしながら、そんな身の上話を聞かされては、追い出すわけにもいかない息子夫婦と暮らすよりも、ここに居るのがいいのだったら、それでいいと思うこうして、奇妙な生活が始まろうとしていた…それにしても、情けない話まだ結婚をしていない自分が、ましてや他人の家庭の揉め事に意見を言える立場ではないかもしれないが、あえて言いたい自分のお腹を痛めて産んでくれた母親のことを、見捨てるようなことができることに人間性を疑う母と嫁…どちらを選べと言われても、どちらも大事で、選ぶことなんてできないはず所詮は赤の他人なわけなのだから、少なからずとも衝突はあるそのなかで、互いが思いやり、気配り、妥協点を見つけながら、生活していくものなのではないのだろうか夫婦、嫁姑ってそういうものじゃないのかな?もし、いつの日か自分が結婚する日がきたとしたら、当然のことながら、我が母と同居ということになるもしも、そのなかで妻に、「私とお義母さん、どっちが大事なの?」と、そんなセリフを吐かれたら、自分はなんと答えるだろうか両方とも…という答えでは、きっと納得しないのだろう強いて選べというのなら、母をとると思う女手ひとつで自分を育ててくれた母を、やはり見捨てるわけにはいかないからであるそんな事言ったら、妻の立場からしたら顰蹙ものだろうけれどこのマザコン野郎ッ!!てねあ!だから、自分は結婚できないのか