カテゴリ:日本経済
バブルを考える(88)
債権放棄を巡って…その4 熊谷組 2000年の年末ギリギリに再建計画のまとまった熊谷組のケースはこうでした。熊谷組は大手5社(鹿島、清水、大成、大林、竹中ー竹中のみ非上場)に継ぐ、業界6位のゼネコンでした。4300億円の債権放棄(他に200億円の債務の株式化を含んでいたので、実質は4500億円になる)を軸に不良資産の処理を進め、残存債務は今後12年間に1500億円(年平均125億円)を収益の中から返済するという計画でした。 この収益を確保するために、今後3年間で2000人の人員削減を図る計画でした。しかし、熊谷組を取り巻く環境は厳しいものでした。例えば再建計画に盛り込まれた「最終年度の売上げ目標4755億円」についても、「建設投資が減少傾向を辿る事が確実視される環境の中で、どのような予測の下で算出したのかも明確にされていないのでは、数字の妥当性を判断する以前の問題である」(モルガン・スタンレーのアナリスト談)という論評が、多くの支持を得たように、その実現可能性はほとんど信じられていなかったのです。 実は、熊谷組の再建計画には、業界首位の鹿島建設との資本提携が含まれていました。当然、将来的には鹿島建設による熊谷組の救済合併が含みとされていたのです。業界首位と6位の合併です。しかもダムやトンネルなど土木中心の熊谷組と建築中心の鹿島建設の合併ですから、相乗効果も期待できました。 実現すれば鉄鋼業界における新日鉄のように、ゼネコン業界におけるガリバー型巨人が登場したはずでした。しかし鹿島はこの申し出を断りました。社長等経営トップの派遣すら拒否し、代表権を持たない2人の役員を派遣するに留めたのです。 建設業界を取り巻く環境の中では、「合併によるスケールメリットは描き難い」。これが大手ゼネコンに共通した考え方だったのです。 同じ不振業種の中でも、この点に建設業界と流通業界の環境の違いが、歯っきりと現れています。ヤオハン、長崎屋、そごう、マイカルが破綻し、ダイエーが産業再生機構の傘下に入り、西友もウォルマートの傘下に入った流通業界では、民事再生法の下で再建を目指しているそごうは、西武百貨店の傘下に入り、不採算店を閉鎖しながら再建を進める算段をしています。 西武はそごうの吸収合併にスケールメリットを見出している。しかるに鹿島は熊谷の合併に、何のメリットも見出せずにいる。ここに、流通業界と建築業界を取り巻く環境の違いは、歴然としているのです。 しかるに、そごうは法的に処理され、対する準大手や中堅のゼネコンは債権放棄という名の私的整理によって、生き延びようとしていました。 ここには,明らかな矛盾がありました。 続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.01.08 21:24:46
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