カテゴリ:日本経済
政治を斬る(72)
銀行が預金集めに不熱心であると、何が問題になるのか。これは簡単ですね。昔から、「塵も積もれば山となる」の例えが良く使われます。市場で小口の資金を集めて(この場合は預金として)、まとまった資金として企業などに貸し出す。そのことによって経済の成長を促す。そして貸し出しのリスクを取った分を、リスクに応じた利息として入手し、預貸利鞘を得る。こうして経済の成長に寄与するのが、銀行でした。 私が中学や高校の頃に教わった、資本主義経済における銀行の役割についての知識ですが、これは今も変わらぬ、銀行の役割なのです。しかし、その機能はいまや果たされず、銀行は投信の販売やカードローンの宣伝にばかり熱心です。するとどうなるでしょう。 メガバンクの首脳が良くクチにする言葉に、「貸したい相手は借りてくれない」というのがあります。何か「これが日本のメガバンクの経営者の発言?」と悲しくなるセリフです。その分、貸し倒れの危険がますけれども、リスクの高い分より高い利息を取れるところに貸せるから、利益を膨らますチャンスとなぜ捉えないのでしょう。不思議です。 しかし、これが現実です。確かに優良企業は銀行借り入れよりも、支払い利子の少ない直接金融に比重を移しています。ですが、中堅以下の企業、地方の企業、中小零細企業は、銀行に融資を絞られ、運転資金にさえ窮して、さしたる赤字もないのに次々に倒産の憂き目を見ています。 G7諸国などは、どの国も歴史的低金利状態にあり、米・英・EUも揃って、市場に大量の資金を供給して、金融機関に積極的な貸し出しを促しています。日本にいたっては、90年代後半の金融危機以来、ずっと低金利と日銀による無利子に近い資金の提供をずっと受けているのです。それなのに、金融機関は積極的な貸し出しに踏み込んでいません。 アツモノに懲りてナマスを吹いているのです。地方企業や中小零細企業の中には、確かに建築や土木のように、整理淘汰が必要な業種もあります。しかし、必要な企業も、熱心に再生を目指している企業もあります。相した企業に必要な資金が回らないのが、現在の問題点なのです。 そのはずですよね。銀行が地方銀行を含めて、預金獲得に熱心でないのですから。これではいくら日銀が市場に資金を提供しても、日銀の空回りに終ってしまいます。銀行が積極的にリスクをとろうとせず、企業に金を貸すことに不熱心なのですから…。 これでは日本の経済活動が、大きく回復していくことはありえなくなってしまいます。失業率も高止まり、残念ながら縮小均衡の道に入っていかざるを得ないと、見立てるしかなくなってしまうのです。 亀井金融担当大臣さん、この状態を放置して、郵貯の肩だけ持っていて、大臣の職責を果たしたと言えるんですか? 続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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