カテゴリ:国際経済
ユーロの憂鬱 (35)
スイスのバーゼルに本拠を置くBIS(国際決済銀行)は、各国の中央銀行の集合体で、グローバル金融に関する規制監督の総元締めです。ですから、BISにとって個別の金融機関に対する自己資本規制の強化、並びにそのための体制整備は、何をおいても譲れない一大関心事なのです。 そのBISが、ドバイショックを受けて、2012年からの導入を予定していた、金融機関に対する第3次自己資本規制の実施を、当分の間延期すると発表したのです。 例によって日本の新聞は、経済専門紙の日本経済新聞でさえ、曖昧な表現で事実を報じたに留まり、その原因に迫る迫真のレポートは、対に出ませんでした。日経新聞は、12月16日の1面で他社に先駆けて報じたことで、僅かに面目を施したに過ぎませんでした。速報は、それを肉付けする第2弾、第3弾でのより深い分析記事に裏付けられて、初めて輝きを増すものなのですが… その点海外メディアはさすがでした。欧米に限らず、インドやシンガポールの新聞なども、BISによる延期措置が、ドバイ・ワールドに絡んだ決定であることに、当初から踏み込んで報じていました。 そこでは、現在の金融危機の状態のなかで、自己資本規制を強化すれば、金融機関の貸し出しが益々萎縮するという理由付けと共に、イギリスの金融機関が、ドバイワールドなどドバイ関連の貸出し債権の不良化で大きく傷つき、規制のクリアが難しくなっていることに、配慮した措置である旨が、きちんと書き込まれていました。 BISが、何よりも大切にしている国際金融界の秩序維持、そのために必要な規制の強化という大方針を、一時的にでも見送らざるを得なかったのですから、ことは重大です。ドバイ問題の影響は、これほどに大きかったのです。 続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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