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ザビ神父の証言

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2019.09.09
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カテゴリ:国際政治
クロニクル イラク軍、イランを攻撃

1980(昭和55)年9月9日

39年前のことです。この日、イラク軍は突然シャットル・アラブ河を渡り、イランを攻撃しました。チグリス河とユーフラティス河の両河が合流した下流域のシャットル・アラブ河は、両国国境を構成していました。それは良いのですが、問題は国境線にありました。通常河川が国境となる場合、河の最深部を繋いで国境とするのが普通です。この場合でも河口に近くなると、三角州だ中洲だとややこしくなります。大河で中洲も大きく、しかもその地が資源の宝庫だったりすると、中洲のどちら側が本流かをめぐって、激しい争いが起こります。

中ソ論争の根本には、国境を流れる中国名黒竜江(ロシア名アムール河)の中洲である中国名珍宝島(ロシア名ウリンスキー島)をめぐる争いがあったことは、ご記憶の方も多いと思います。

ところが、イランとイラクの場合、国境はシャットル・アラブ河のイラク側国境と定められていたのです。これでは、中洲の島々(その幾つかには、原油の埋蔵が確認されていました。)は、全てイランのものとなってしまいます。就任後日も浅く(79年7月就任)、まだ権力基盤が安定していなかったイラクのフセイン大統領は、イラン革命の進展と、イランと米国との関係悪化、イランイスラム革命の自国への飛火を恐れるサウジ、クウェート等王制諸国の思惑などを計算して、国際的支援の期待できる今こそ、対イラン国境を修正し、アラブ世界におけるイラクの地位を向上させることで、国内における権力基盤を強固なものにすることが出来ると計算して、この日、イラン領への越境攻撃に踏みきったのです。

戦闘は次第に本格化し、22日にはイランとイラクは全面戦争に突入しました。しかし、いくらイラクに国際的な支援があり、近代兵器や資金の支援が潤沢であっても、革命の意気に燃えるイラン市民の熱意、革命防衛の熱意を萎えさせることが出来ないのは、フランス革命の防衛戦争やロシア革命期の干渉戦争の顛末を見れば、明らかでした。戦争は泥沼に陥り、8年の長きに渡りましたが、フセインのイラクは、遂にイラン・イラク戦争に勝利することは出来ませんでした(停戦の実現は1988年8月20日のことでした)。

イラン・イラク戦争においては、イラン革命の輸出を恐れるアラブ穏健派(親米派)諸国の政府を維持しようとする米国を中心とする西側諸国のみでなく、ソ連(当時)や中国もサウジ、クウェート、UAE等の資金提供を受けて、豊富な資金を持つイラクへの武器売却を進めており、イラクは米国製は勿論、英・仏・独さらには、ソ・中製の武器を大量に保有するにいたっていたのです。そのイラクを相手に、一歩も引かない戦いを展開したイラン軍の頑張りこそ、この戦争では評価する必要があると私は考えています。

それはともかく、戦争の結果、イラクは大量の近代兵器を保有しました。クルド攻撃にフセインが使用したとされる毒ガス兵器ですが、これを生産する工場のプラントをイラクに輸出したのは西ドイツ(当時)でした。戦闘機はソ連製のミグ、ミサイルはフランス製、戦車は英・仏・中国製といった具合だったのです。イランを攻撃する者は善。こうした単純な思考が、その後のアラブ世界の問題児、フセインのイラクを作り上げた事実は,湾岸戦争でも、その後の米国のイラク攻撃(これは理不尽そのものでした)でも、意図的に隠されたままになっていました。

中東への武器輸出、今なお続けられていますね。





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最終更新日  2019.09.10 01:44:05
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