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カテゴリ:宮部みゆき作品
イブさん、こんばんは、やまももです。
また拙ブログの掲示板に宮部みゆきの『楽園』について興味深いコメントを書き込んでくださり、本当にありがとうございました。 それで、「宮部さんが今回の作品を書いたのは『模倣犯』の森田監督への反旗などではなく、滋子の『その後』を書きたかったのでは?と思いました」とのご推測には基本的に私も賛成いたします。なお、『楽園』の「あとがき」に、作者が『模倣犯』執筆中にある夢を見て、それがヒントとなって『楽園』を書いたということが書かれていますね。その夢とは、「自分にもう一人姉がいて、私のしらぬまに殺害されており、その亡骸が家の床下に埋められている」という内容だったそうですね。 また、雑誌『本の話』8月号に宮部みゆきのインタビューが載っていますが、そこでも彼女はこの夢の話を紹介するとともに、それが「小説のネタになるな、前畑滋子を関わらせようと、早い段階で思っていました。ものを書く仕事をする前畑は、多分に私とイコールなところがあり、彼女は『模倣犯』で凄惨な事件と向き合ってダメージを受けたままでしたから、もう一度くらい登場させたいと思っていました」とも語っています。 それから、イブさんはまた、「『第三の眼』とはっきりさせなかったのは、今の、踊らされているという情報に宮部さんは警告したのかな?」と推測しておられますね。おそらく、イブさんのこのようなご推測は、TVや雑誌等で超能力を取り上げた怪しげな番組や記事が氾濫していることへのイブさんご自身の疑問と関連があると思います。 しかし、『楽園』の読者がこの小説を読み終わった後で、まだ小説中の等少年の超能力について疑問を持つ人は多くはないと思いますよ。少なくとも私は等少年は曾祖母から「千里眼」の能力を受け継いだ超能力者に違いないと思いました。 作者の宮部みゆきは、等少年の超能力が生み出した不思議な絵に秘められた真実を前畑滋子の丹念な調査と推理によって次第に明らかされて行き、またその解明過程を通じて等少年の超能力も証明されて行く(但し、そのことは前畑滋子は世間に公表しません)というストーリーを組み立てて書き上げたと思います。 なお、『楽園』に出て来る「第三の眼」という言葉ですが、これは前畑滋子の夫の前畑昭夫が等君が描いた蝙蝠の風見鶏の家の不思議な絵にについて、「超能力だかなんだかわかんないけど、特別な感覚のあるヤツっているじゃねえか。等君にはそれがあったんだ。普通の人間にはない眼だ。第三の眼だよ。三つ目の眼だよ。それがさ、心のなかにあったんだ」と言っています。前畑滋子は、その後で等少年の三角屋根の絵に瓶が描かれていることを再確認したときに、昭二の言った「第三の目」という言葉によって脳をゆさぶられていますね。さらに、下巻の後半にも萩野敏子との関連で「第三の眼」という言葉が出てきていますね。 しかし、この「第三の眼」という言葉はとても多義的であり、また超能力にほとんど関心がなさそうな前畑昭夫が「超能力だかなんだかわかんないけど」と言いながら「第三の眼」という言葉を出しているように、超能力関連の専門用語ではないのかもしれませんね。例えば、先ほど紹介しました雑誌『本の話』の宮部みゆきへのインタビューの中でも、彼女自身が「『第三の目』というものを、子供は持っているんじゃないかな、と思います」と語っていますか、この場合の「第三の目」とは、大人とは違う子どもならではの目というような意味ではないでしょうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年09月05日 22時15分24秒
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