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カテゴリ:宮部みゆき作品
昨夜(5月14日)、TBS系で宮部みゆきの『スナーク狩り』(光文社、92.06.10)を原作とするテレビドラマが放映されました。
ところで、題名の「スナーク狩り」の意味なんですが、宮部みゆきの原作の「付記1」に国分範子が関沼慶子に出した手紙が紹介されており、そこに作者の主張が明確に述べられています。 「そうそう、『スナーク狩り』というお話を知っていますか? これも修治さんから聞いたんです。ルイス・キャロルという人の書いた、とてもおかしな長い詩のようなものなんですけど、スナークというのは、そのなかに出てくる、正体のはっきりしない怪物の名前なんです。/そして、それを捕まえた人は、その瞬間に、消えてなくなってしまうんです。ちょうど、影を殺したら、自分も死んでしまったという、あの恐い小説みたいに。」 今回のテレビドラマでも、関沼慶子(田中麗奈)がルイス・キャロルの散文詩に出てくるスナークという怪物のことを佐倉修治(伊藤淳史)に語っていますが、当初は何らかの理由から退治せねばならぬと思っていたのが、いつのまにか「ただ殺すことだけに夢中になり」、殺意に身も心をすっかり支配されてしまう心理を述べています。関沼慶子も一度はそんな心理に取り憑かれたことがあるのです。彼女は結婚まで約束した国分慎介(水上剣星)からまるでボロクズのように捨てられ、抑えきれない激しい怒りに耐え切れず、この男の結婚式場にライフルを持って入り込んでいます。彼女は、ライフルの銃身に錘(おもり)を詰め込み、結婚式場で自分を裏切った男に銃口を向けて引き金を引くことによって自爆し、自分の抑えきれぬ恨みを晴らそうと考えたのですが、男の妹の国分範子(夏菜)の必死の説得でその計画を思いとどまります。 ところが、結婚式場からライフルを自分の住むマンションに持ち帰った関沼慶子は、織口邦男(柄本明)からそのライフルを奪われてしまいます。この織口邦男は、彼の妻と娘を大島義彦(與真司郎)に惨殺されていたのですが、犯人の大島義彦は裁判で自らが心神喪失状態で罪を犯したと無罪を主張し、いまは金沢市の木田クリニックで入院治療を受けているのでした。それで、織口邦男は同クリニックまで行って、大島義彦自身の口から犯罪を行ったその本心を直接訊こうと考えたのです。織口邦男の計画では、まず慶子からライフルを奪い、この銃を大島義彦に突きつけて本心を訊き出し、返答次第によっては「死刑」に処するつもりでいたのです。 このサスペンスドラマは、慶子の銃と車を奪って金沢に向かう織口邦男と、彼の行為を阻止しようと追い始めた佐倉修治と関沼慶子、さらにトラック運転手の神谷尚之(宮川大輔)や刑事の桶川勝男(寺島進)、黒沢美香(菊池亜希子)が絡んでスピーディに展開していきます。本来、心優しい人物である織口邦男が、慶子から銃を奪って犯人の大島義彦から本心を訊き出そうとする計画を実行していく中でどんどんと犯人に対する憎悪と殺意が増し、顔つきまでもがスナークに心を奪われた凶悪な怪物に変身していく姿を柄本明が見事に演じていました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年05月15日 20時53分57秒
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