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カテゴリ:ちょっとなつかしのファンタジー
よく行く医院の待合室にあるので、何度も読んでしまいました。森田京『つりばしゆらゆら』。全ページ絵つきの幼年童話で、きつねの子のなんともほのぼのした絵(by土田義晴)が、すなおでかわいいです。 つりばしの向こうはどんな所だろう。きつねの子は、友だちのくまの子、うさぎの子といっしょに、自分たちの家の近くにあるつりばしをながめます。行ってみたいけど、ゆらゆらゆれるつりばしは怖そうだし、向こうに何があるのかも分からない・・・。でも、気になるつりばし、気になる“向こう側”。 単に谷の向こうのことなんですけど、何だか不思議な未知の世界、別世界のようにも思われます。きつねの子にとって、自分たちのよく知る世界に隣接していながら、深い谷にへだてられ、行けそうにない“向こう側”。でも、ぼんやりと見えているし、あぶなっかしいつりばし一本ではあるけれど、現世とつながれているので、もしかしたら行けるかもしれない。 つりばしの向こうは、そんな“異境”なのです。 とそこへ、つりばしを渡ってこちらへ来るいのししおじさん登場。言葉少なでちょっと無愛想で、いかにも“大人”という感じのいのししは、つりばしを渡ることを、 「こわくはないが、あまり気持ちのいいものではないね」 「やめておきなさい。向こうへ行ったはいいが、こわくて帰れないではこまるだろう」 というようなことを、きつねの子たちに言います。なるほど大人の言いぐさです。でもいのししは“向こう側”とこちら側を仕事でわりとよく行き来している人です。ファンタジー的に言うと、ちょっと魔法使いじみています。 いのししから、“向こう側”に、同じ年頃のきつねの女の子がいると聞いて、憧れをつのらせるきつねの子の心情が、こまやかにえがかれています。「もっと大きくなってから渡ろう」というくまやうさぎの子に対し、きつねの子はきっぱりと、大きくなってはだめ、「今のきつねの子」と遊びたいと言います。 そして一日一歩ずつつりばしに踏み出していくきつねの子。つりばしの中ほどで、“向こう側”へ花を贈り、ハモニカの音楽を贈るきつねの子。いっしょうけんめい、別世界への呼びかけをしているんですね。 この本は最後まで読んでも、きつねの子は“向こう側”へ行けません。そちらに住むというきつねの女の子も姿を見せません。でも、確かにいると信じたい。きっと行けると信じたい。日常世界と“向こう側”をつなぐ、一本のつりばしの上で、きつねの子の信じる心が、すてきです。 同じ作者・画家の作品に『あのこにあえた』などというのもあるらしいので、また読んでみたいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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