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カテゴリ:ちょっとなつかしのファンタジー
今年の謝肉祭(カーニバル)はきのうで終わって、今日は聖灰水曜日だそうです。以前このブログでもとりあげたホフマンの『ブランビラ王女』を再読しました。これは、ローマの謝肉祭を舞台にした幻想物語です。
あとがきによると、作者ホフマンは実はローマどころかイタリアに行ったことなどなかったのに、イタリア喜劇の仮装が描かれた版画に着想を得て、この物語を書いたそうです。また、謝肉祭の様子はゲーテを参考にしたとのこと。 なるほど、ホフマンもドイツの人ですから、明るい古代文明の地イタリアに憧れをいだいていたのですね。 そして、ローマの謝肉祭最終日(マルディグラ)の夜に叫ばれるという、 <蝋燭ヲ持ッテナイ奴ハ殺シチマエ!> --E・T・A・ホフマン『ブランビラ王女』種村季弘訳 も、ゲーテの引用だそうです。若いとき読んだ岩波文庫のゲーテ『イタリア紀行』(相良守峯訳)をさがしてみると、ありました、「蝋燭の燃えさし(モッコリ)を持っていないものは、殺されてしまえ!」と言いながらろうそくを消し合う大騒ぎをして楽しむと。 そして、何だかこれに似たセリフに覚えがあると思ったら。 そう、エンデ『鏡の中の鏡』の第7話に、 「明かりをかかげている者どもを、殺せ!」 ーーミヒャエル・エンデ『鏡の中の鏡』丘沢静也訳 というのがありました。おお、エンデもドイツ人でしたっけ。こういうふうに発見がつながってくると、面白いですねえ、ブック・サーフィン。 もっともエンデのは文の意味が逆になっていて、このあと本当に虐殺が起こるという血なまぐさい場面。羽目を外して楽しむ祭のかけ声とは正反対の裏返しですね。 謝肉祭の無礼講は、聖/俗、男/女、貧/富、生/死など既存の価値観をひっくり返すカタルシスだそうですが、エンデはそれをさらに逆手に取っているというわけです。 さらに連想すると、明かりをかかげるというのは、ユング心理学で言うところの、理性の象徴です。明かりをかかげて暗闇を照らし、真実を見極めるという行為は、たとえば「美女と野獣」などのおとぎ話で、男の正体を見極めようとする女性なんかに表されているそうです。 すると、ろうそくを持つ者を殺せというエンデの恐ろしいセリフは、理性が圧殺され狂気が支配する感じがしますね。そしてどうしても、前世紀のあの大戦中のドイツ(そしてイタリアや日本などでも)の悪夢ーー全体主義によって個人の理性が圧殺された悲劇を思い起こさずにはいられません。 お祭の狂騒とほんとうの狂気とは紙一重。そんな気のする、聖灰水曜日でした。 木曜日からは、四旬節(レント)の断食です。中山星香の古~い短編「魔法使いたちの休日」を思い出しました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 7, 2019 12:44:19 AM
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