【谷中コミュニティセンター図書室の本めくり 032】
■『経理のおしごと手帖』小泉禎久 2009年発行ジャンル名:経済・法律 336.9風雨が荒れ狂う中、こちらも風邪をひいてしまった。こんな時には、長いものは読む気になれない。経理の基本ルールから始まっていてコンパクトにまとまっていて楽しい。手書きの場合の桁数や数字の書き方。そして機密保持。そしてお札の数え方のイラスト紹介~まず、左手の小指と薬指でお札をはさみます。はさむ位置はお札の下から4分の1あたり。親指と人差し指でお札の4分の3の位置をはさみます(嗚呼、こっちはティッシュをはさんで鼻をかむのが精一杯の状態だ~)。あとは左手の親指で右側にお金をスライド。右手でつまんで数える。ナルホド。 簿記の最初に、お小遣い帳と簿記(単式簿記と複式簿記)の違いが説明される。ここをしっかりやってくれるのが大事ではないか。仕分けや、貸方が何、借方が何というのはいやでも覚えるのだから、その前がきちんと書かれているのがいい。単式簿記が+と-で済ましてしまうところを、項目を両側に同時に置いて、その履歴を残していく説明がある。本書ではこの「同時」というところを順を追って、例えば、売上1,000円を表すのに、1(借方) 現金が1,000円入ってきた。2(貸方)1,000円の売上があった。の順に書いて理解を促す。つまりは、「現金が1,000円入ってきた」その理由は「1,000円の売上があった」から、と。逆に現金が100円出ていったら、それと反対側に同額の100円を記入して、さらにその勘定科目を考える。 ただ、同時に発生というのは、何か一つの経済行為には必ず2つの見方/見られ方が創られるわけで、それがやがて仕訳帳を経て、貸借対照表と損益計算書という経営者の数字でもあり、株主の判断指標にもつながるこのマジック(見方/見られ方)のダイナミズムを追いかけるためには、まさに、「同時に発生する」という「境界線」を安易に1、2、…と順を追って解釈してしまわないことのほうにあると私は思うけれど、「おしごと手帖」はそこを求めているわけではないだろうから、致し方ない。熱は下がったようだ、ふ~っ。 間違えやすい勘定科目として、売掛金と未収入金、買掛金と未払金、仮払金と前払金の説明。現場が遠いと仮払金が増え、これと立替金などが加わるともうお手上げだ。リースなどで月をまたぐものには通過勘定項目というのがあるのは知らなかった。 給料計算は私もやっていたが、やはり月をまたぐ性格のものだから、厳密な按分の仕方や社会保険との関係、ひいては、そこから予算を立てる際の月別収入との微妙なずれなど、現実の経理は難しいのだ。※それでも、谷根千の町のお店の人たちと決算時期などに銀行で残高証明などでバッタリ会ったりすると、年度末の成績表を受け取る生徒みたいで、何か面白かった。これだけあくせくしても所詮お足は谷根千の中をぐるぐる回っているんだからね。(1,160字)