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カテゴリ:本・まんが
女が犯した、人殺しよりも深い罪とは
交通事故にあった妻と、殺人容疑で逮捕されていた祖母。 ふたりの女が夫に隠そうとした真実を解き明かしたのは、夫婦の間で交わされた手紙だった―。 単身でギリシャに赴任した悟に、一方的に離婚を切り出した妻の奈美子。納得できない悟に対し、奈美子は祖父母の間で交わされた手紙のコピーを送る。 ―約50年前、祖母は殺人の容疑で逮捕されていた。 頑なな態度を貫く祖母と、無実を信じ奔走する祖父。 ふたりの手紙には、誰も知ることのない真実が語られていた……。 (単行本・帯より) 全編手紙で構成されている作品です。 手紙の書き手は悟・奈美子の夫婦、奈美子の祖父母、誠治・春子の夫婦の4人です。 細かい内容については触れませんが、女のわがまま、夢・自由を求める気持ちと、男の包容力、妻に対する深い愛情が対照的です。 でも、女はそれぞれ夫を愛していないわけではない。愛しているからこそ自分の犯した罪を自分で許せず、夫に知られたくないから殺人者の汚名をあえて被ろうとするし、自ら離婚を切り出すわけです。 特に祖父・誠治の愛情にはただただ頭が下がる思いです。 でも、こんな人ほんとにいるのかなぁ?ここまで妻に尽くせる人って…。 裁判が終わって帰ってきた妻をふたたび迎え入れ、妻が若くして亡くなるのを看取り、死後も自らが92歳になるまで毎月墓参りを欠かさず再婚もしなかった。 愛情はもちろんですが、自分を納得させるため、自分の意地のためという側面もあったのでは?と思う私はひねくれてますね。 確かに、祖母・春子は純粋に愛情だけで誠治と結婚したわけではないでしょうが、ここまでの裏切り行為をしてしまう心の動きというのも、正直よく解りませんでした。 現在とは戦争や貧しさなど、想像もできないほど環境も違うのですから解らなくて当然かもしれません。 ただ、春子は再び誠治と暮らし始めて心安らぐ幸せを感じることができたでしょうか。そうであってほしいと願うばかりです。でないと、誠治もかわいそうすぎます。 手紙形式ということもあり、一気に読めました。 手紙のやり取りの中で秘密が明かされていく過程や、それでも嘘を重ねてしまう春子・奈美子の心の在りようが興味深かったです。 以前真保裕一の作品を途中でギブアップしたことがありましたが、こういう作品も書かれるんだとちょっと驚きました。 『追伸』真保裕一 発行:2007年 発行所:文藝春秋 価格:\1500(税込) 追伸 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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