|
カテゴリ:ついつい批判的にみてしまう会社法
前回、預合の効力をどう解するかによって預合罪の被害者がかわってくるのかって疑問を残しておいたんですけど、そもそも預合罪の処罰根拠って何なんでしょ。
可能性としては A 資本充実原則を害するから B 登記上の資本金の額(911条3項5号)と実体が異なり嘘登記をしたことになるから C 預合って何か悪そうだから というところでしょうか。 ただ、預合の効力をどう解するかによって、その中身も変わってしまうような気がします。 たとえば、預合を構成する要素である 1 銀行→発起人への貸付行為 2 発起人→銀行への払込行為 3 発起人-銀行 貸付金返済するまで払込金を引き出さない約束 のうち、2を有効とし3を無効とする見解(「2有効3無効」説)では、通常の払込みの場合と預合の場合とで何ら私法上の効力に違いはないから、A資本充実原則を害することもないし、B登記上の資本金の額と実体が異なることもないですよね。そうすると、C何の法益の侵害してないけど預合って何か悪そうだからって理由になっちゃうんじゃないですか。 刑法学説でも「何でもかんでも法益保護で説明すんな」って見解もあるから、Cの考えそれ自体がおかしいって言ってるわけじゃなく、「2有効3無効」説では預合罪の処罰根拠をそう説明せざるをえないでしょってこと。 でも、何の害もないのに処罰するってのは抵抗があるけどね。私法上の効力に影響がないんだったら刑罰をもって抑止する必要なさそうだし。まあ、そのへんは刑法学上あれこれ議論されてるところで、あたしの頭がまるっきり法益保護主義に染まっちゃってるからそう思っちゃうんでしょけども。 他方で、「2無効」説では(2の払込が無効なら3の効力は会社にとってどうでもいい?)、A本当なら払い込まれるはずの資本金が入ってこなかったから資本充実原則を害すると説明するか、B登記に載ってる資本額と実際に会社の資本金となってる金額が一致しないから嘘登記をしたことになると説明することになると。 刑事の話から脱線して私法上の効力に関する議論に話を戻すと、無効説の立場から「預合は資本充実原則に反するから無効」って説明されることがあるんですけど、これって論理が逆転しちゃってますよね。というのも、なんで預合が資本充実原則に反するかっていうと、それは預合が無効だ(と解する)からであって、有効説(厳密には「2有効3無効」説)なら資本充実原則に反することにはならないですよね。 つまり、 A 預合は資本充実原則に反する→ゆえに無効 ってのは話が逆であって、 B 預合は無効である→その結果資本充実原則に反することになる っていうのが筋としては正しいんじゃないかと。 だから、預合を無効だというためには資本充実原則を持ち出すことはできず、それ以外の理屈をもってこざるをえないと思います(このあたりが預合と見せ金の決定的な違いであって、見せ金の場合は有効説だろうが無効説だろうが、現実にお金がでてっちゃうという意味では会社財産が害されることに変わりはないんですよね)。 そんなこんなで、有効説では、なんで預合が処罰されるのかの根拠をはっきりと示さないといけないし、他方、無効説では、そもそも何で預合が私法上無効になるかの根拠をはっきり示すところからはじめなきゃいけないと(じゃないと処罰根拠も不明なまま)。 で、残りの可能性として「2有効3有効」説というのがあると思うんですが、この説なら自由に利用できない会社財産を作り出したという意味で、それなりの実害があることにはなりますよね。けど、制限がかかっているおかげで会社が設立直後に勝手に利用できないというのは、必ずしも悪いことではないですよね。発起人に対する貸付と相殺できるっていうんだったら問題ですけど、そうではなくって、まがいなりにもそれだけの財産を銀行がとっといてくれるってことなわけで。 で、結局、混乱したままでとりあえずここまで。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年07月26日 20時52分06秒
コメント(0) | コメントを書く
[ついつい批判的にみてしまう会社法] カテゴリの最新記事
|
|