映画ドラマ・千一夜

総合点：87　★★★★＋
（シナリオ・演出）=8.7　（キャラクタ）=8.7　（音楽）=9

●1990年度　アメリカ映画　監督：ゲイリー・マーシャル　製作：アーノン・ミルチャン　スティーヴン・ルーサー　製作総指揮：ローラ・ジスキン　脚本：Ｊ・Ｆ・ロートン　撮影： チャールズ・ミンスキー　音楽：ジェームズ・ニュートン・ハワード　編集：Priscilla Nedd 出演：リチャード・ギア（Edward Lewis）　ジュリア・ロバーツ（Vivian Ward）　ラルフ・ベラミー（James Morse）　ジェーソン・アレクサンダー（Philip Stuckey）　ローラ・サン・ジャコモ（Kit De Luca）
●エドワード・ルイスは企業買収を手がけ、ターゲットとする会社を買収してはバラ売りすることによって莫大な利益を手にするような実業界の一匹狼。恋人がいるのだが、不用意な言葉で喧嘩をして別れ、たまたまハリウッドの路上で、ストリート・ガール、ビビアン・ウォードと知り合う事になる。彼はビビアンを気まぐれ半分で高級ホテルの自分の部屋に呼ぶのだが、ビビアンにとっては、それは見たこともないような眩い世界だった。
　何彼と話すうちに思ったよりも知性のあるらしい彼女を気に入ったエドワードは、1週間、彼女をアシスタントとして頼むことにする。
*************************多少ネタバレします**********************************
●見終わった後で、ああ、なるほど、と納得感がある映画です。昨今、大きな金額のお金を預かって企業を買収し、それをまた誰かに転売して儲けるような、いわばターゲットを企業や会社にするような（或るときは国だったり地球全体だったりもするのですが）、そういう商売、ってのが話題になっています。いつのまにか資金に国境がなくなり、或る者のところに一挙集中してしまうような現象が現れてきた。掻き集めた何兆円ものファンド資金が、一国の国家予算を遥かに超える、なんてことも当たり前に聞くようになってしまいました。
　商売は、「何かを仕入れて他に売って、その間の利ざやを得る」のが目的の行為なので、買うのが国でも地球でも月でも何でもよいのですが、まあ、世の中は混乱する。土台をいつもしっかり見ていないと、誰かにして遣られて知らないうちに自分のものと思っていたものが全部人手に渡ってしまっていた、なんてことも起こり得ます。
（余談ですが、昔、江戸時代には日本中に「藩」という制度があって、土地とそこに縛り付けられた人間を土台とした共同生活運営システムがあったと思うのですが、ここから人を土地から解放して、海を舞台に商船隊＝藩として考え、海援隊を形成したのは坂本竜馬でした。発想が日本人離れしていた！　それからスタートした会社、という概念は、法システムを守りはするが、或る意味の運命共同体であり、藩＝国みたいなものです・・・。よって、そこで働くものが「国」に属するような意識が生まれる・・・）
　こういうことに携わる男達は（女もそうだけれど）、或る意味利己主義で、人の人情どうのこうの、なんて考えないのです。それをしていたら、この種の商売はできない・・・。
　そういう冷たい男であり、自分だけが濡れ手に粟的な手段で巨額の金を得て、その金で高級な世界を渡り歩いていたエドワードが、こともあろうに、考えようによっては最も苦しい世界で這いずり回っていたビビアンに心の平安を見出すところに、妙がある。まあ、人間味、みたいなものでしょうか？
●或る意味、現代版シンデレラ物語だし、アメリカン・ドリームだし、一つの恋の形態の描写だし、人間描写でもあります。古典で言うと「椿姫」に近いかとも思うのだけれども（「椿姫」は本で読んだだけで、映画はまだ見ていません）、この映画は演出も会話もなかなか洒落ていて、かなり良い印象でした。
●ジュリア・ロバーツは様々な映画に出て非常に有名な女優さんですが、この映画が一番印象に残っており、また、リチャード・ギアも多々ある映画で良い演技をしていますが、この映画も良かった。
　昔、中学の英語の教科書に「ミスター・ブラウンとミセス・ブラウンはお風呂に入っている」とかいう文章があって、一緒に入るのか？　なんてクラスで話題になったような記憶がありますが、この映画のシーンでまず思い起こされてしまうのが、そのシーンです。
●有名な映画は、その中のシーンがその後、幾つかの映画やドラマに引用されたりするもの・・・。この映画の音楽も有名で、多々他の映画やドラマに引用され、話題にもなった作品です。ビビアンに非常に高い服を買ってやったりするシーンも、その後、韓国ドラマで多用されたりしますよね？