映画ドラマ・千一夜

総合点：95　★★★★★
（シナリオ・せりふ）=9　（画・音楽のユニークさ）=9　（キャラクター）=9　

●2005年度　韓国ドラマ　ＳＢＳ　(全2話）演出： パク・キョンニョル
脚本： パク・オニ　キャスト：
◇イ・ドンウク（パク・ウヌ役）：ボランティア活動の一環としてハノイに派遣された内科医師。通訳として病院に働きに来ていた学生のリ・ティブに恋心を抱くが、互いに認め合う前に帰国の日が近づいてしまう。
◇キム・オクビン（リ・ティブ役）：ハノイの韓国語学科に通う学生。はにかみ屋だが、芯がしっかりしている。姉が韓国人男性と暮らし、その子供とも一緒に育ったために韓国語が話せる。
◇イ・ウォンジョン（パク・ソグ役）：ウヌの兄、４０歳。農村で暮らす未婚の男。世話好きの老母を養っている、まじめで誠実だが、30年以上初恋の人を思い続ける。しかし、年老いた老母の願いを無視できず、役所から勧められたベトナム娘とのお見合いに参加する。
◇カン・プジャ（ウヌとソグの母役）：
◇ユ・へジョン（ソン・イルラン役）：病院付属の看護師研修センターのチーフ。ソグの幼馴染。明るい性格の美人だが、恋愛に失敗して自殺未遂の経験がある。ソグが、若いベトナム娘と結婚すると聞き、動揺する。
●お話
　清平の病院で働く内科医のウヌ。彼は１年前、ハノイの病院で研修医として働いていた。そこに通訳に来ていたのは、まだ大学1年生のティブという女性。彼は次第に彼女に心惹かれるが、彼女の心は掴めない。滞在期間が終了して帰国も迫った日のこと、ようやく彼らは互いに通じるものを感じて、キスするまでに至るのだが・・・。
***************多少ネタバレします********************
●感想です。
・映画かな？　と思って借りてきたのですが、ベトナム終戦30周記念ドラマで２話構成でした。よって、お話は約１０５分で、大変に短いドラマです。
・ですが、密度が濃い。よって、各所でのセリフがキュッと煮詰められた感じがあり、却ってミニドラマより濃厚な展開を感じました。
●ウヌ演じるドンウク・シーは、こういう感じのドラマの主人公は向いてますね。イケメン過ぎないし、悪を言うときは結構嫌味っぽくも見えるし、よって、問題解決の際はスッキリ感がある。マイガールでもそうでしたが、彼のよさを引き出すには、演出次第ですね･･･。
●ここでは、ハノイの花嫁たるティブ演じるキム・オクビンが素晴らしく、適役です。まだ、素朴さの残るピュアでチャーミングなベトナム人の若い女性を演じて、余すところが無い。ともすれば演じすぎるところが出そうな役回りだけれど、非常に良いレベルで抑えられているし、良かったです。
●恋する二人が分かれる事になった経緯には多少の無理があるかもしれないけれど、ベトナムに花嫁を探しに行かなければならない事情のウヌの兄・ソグにしても、高血圧で何とか嫁を呼びたい母親の事情にしても、物語としてのシチュエイションの立て方が旨いし、純朴で初恋一筋だったソグの態度の表し方も秀逸です。
●ソグの花嫁候補としてソウルに遣ってきた女性を見て、ウヌは息が出来ないほど驚く・・・。
●後半、ソグや彼の母親にひどいことをしたと感じて、ティブがソルランに頼みごとをする辺りの進行とセリフが大変旨く、この作品はレベルが高いなあ、と感じました。また、ウヌがベトナムで患者を診て「寄生虫が原因だ」というのですが、ティブは患者にストレートにそれを伝えない・・・。この辺り、彼女の人柄を上手に表現して、演出がいいです。
●音楽も良かったです。スタートのベトナムの雰囲気のする挿入曲も良いですが、ウヌとティブが事情を話し合って、遠く隔った互いの今の境遇に悩む時の背後に流れる曲も、韓国語によく合った旋律で、フィット感が高い。
●ストーリーラインですが、「４０を過ぎたソグがベトナムからの花嫁を迎えるのは仕方がないが、若くて医者で将来有望なウヌには、ソウル在の優秀な娘を望んでいる」母親の本音などもしっかり挿話して、旨いなあ･･･と感じました。
●ということで、総じて拍手／拍手の感じでした。雰囲気、僕が中学生頃のレベルの高かった日本映画の感じがします。カメラ回しも言葉の感じもそれを髣髴させて懐かしかった。
●なぜか分からないけれど、このドラマは、僕には胸を大きく動揺させるドラマだったですね・・・。初恋の頃の思い出が胸に沢山湧いて・・・、正直、辛かったです。
　ティブやソグの持つ独特の清純で気高い雰囲気が素敵なお勧めドラマです。