カテゴリ:新古今夢幻
藤原定家像 狩野探幽原画 法谷文雅模写 「み王田勢ハゝ那も 紅葉裳難可里介り 浦乃 と満や農 秋の夕暮」 藤原定家(ふじわらのさだいえ、ていか) 見わたせば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋のゆふぐれ 新古今和歌集 363 遥かに見わたせば もう花も紅葉もないのだなあ。 浜辺に苫葺きの粗末な小屋だけがある晩秋の夕暮れ。 註 日本人の重要な美意識「侘び寂び」の究竟を示すといわれる和歌史上屈指の名歌で、藤原定家の代表作の一つ。 「なかりけり」と言っているものの、作者の脳裏には花や紅葉の鮮やかな光景が再現(プレイバック)されていることが読みとれる。そのイメージと現実の対比で「もののあはれ」を表現した。 後撰和歌集のよみ人知らず「降る雪は消えでもしばしとまらなむ花も紅葉も枝になきころ」(冬の花といわれる降る雪は、消えずにしばらく留まっていてほしい。花も紅葉も絶えてしまってもう枝にない今)や、新撰和歌集146のよみ人知らず(伝「清原のおうな」)「降る雪は枝にもしばしとまらなむ花も紅葉も絶えてなき間は」(降る雪は枝にしばし消えずに留まってほしい。花も紅葉も絶えてしまってもうない時節には)などの本歌取り。 苫屋:苫で屋根を葺いた粗末な小屋。漁師などが宿る仮の寓居。 「苫」は、菅や茅などを粗く編んだ莚で、舟や家屋を覆って雨露をしのぐのに用いた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022年12月01日 07時14分15秒
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