201.ソロモン海戦(1) オーストラリアは日本帝国に大きな衝撃を受けた
(カモメ)おめでとうございます。今年も、よろしくおねがいいたします。(ウツボ)おめでとうございます。こちらこそ、よろしく。正月もあっという間に過ぎてしまったけど、カモメさんはゆっくりできましたか。(カモメ)俺は、何もすることがなくて、友人とショッピングセンターに行って、ブラブラ過ごしました。毎度のことだけど、パッとしない正月でしたね。(ウツボ)ハハハ、パッとしないか。だけど、俺から言わせれば、あなたは贅沢な正月だね。(カモメ)ええっ、そうでしょうか?(ウツボ)だって、何もすることがないということは、何でもできるということじゃないの。だから贅沢でしょう。俺なんか親戚まわりや、付き合いで、正月は疲れるよ。それこそ「寝正月」が俺の理想ですけどね。(カモメ)なるほど。親戚といえば、俺も正月に、一軒だけ行きました。ヒラメの家に。俺の母の実家なので。みんなで近くの神社に初詣をしました。(ウツボ)初詣、そうですか。ヒラメは振袖でしたか。(カモメ)いえ、洋服です。(ウツボ)そう。ヒラメの、振袖姿、一度見てみたいね。きれいだろうね。もともと色白で、上品な顔立ちの娘だから、よく似合うでしょうね。(カモメ)それが、ヒラメの家に行った時は、ジャージ姿だったので、びっくりしました。それも髪を振り乱して。(ウツボ)ふ~ん、新年早々、新春マラソン大会の練習でもしていたのかね。(カモメ)いえ、マラソンではなくて、自分の部屋にサンドバッグを吊るして、ジャブ、ストレート、アッパーなどパンチの打ち込み練習をしていました。(ウツボ)今勤めている会社を辞めて、ボクサーにでもなるつもりなのかね。(カモメ)ハハハ、それはないと思いますが、どうも気に入っているみたいです。彼女のパンチは脅威ですよ。ふざけて、俺のお尻に一発くらいましたが、かなりのものでした。(ウツボ)ハハハ、正月早々、ヒラメからパンチをもらって、それこそ、気分がシャキッとしたのではありませんか。(カモメ)とんでもありません、ムカッときました。そうそう、ヒラメが、ウツボ先生に「新年会をスキー場でやりませんか」と言っていましたけど。(ウツボ)そうですか、我々の初めての新年会だね。スキー場は面白そうだね。広島の芸北国際でもどこでもいいから、ぜひやりましょうよ。俺、若い時、スキー学校で習ったから、少しは滑れるよ。(カモメ)だったら、僕も賛成ですね。ぜひスキー場でやりましょう。(ウツボ)オーケー。楽しみだね。さて、今回は、「ソロモン海戦」の話を進めるのですが、「ソロモン」という言葉は、小さな頃から、なぜか耳にしているけど、カモメさんはどうですか。(カモメ)そうですね、俺の場合、ソロモンといえば、古代イスラエルのソロモン王ですよね。「キング・ソロモンの秘宝」という映画もありますしね。(ウツボ)一九八五年(昭和六十年)に公開されたアメリカ映画だね。(カモメ)考古学者と娘が、伝説の隠された古代イスラエルのソロモン王の財宝を調査するため、アフリカで様々な危険に出くわし、遂にソロモン王の洞窟にたどり着くというストーリーですね。(ウツボ)映画だけでなく、実際に、一五六八年、スペインの探検家、メンダーニャが武装兵を雇って、ソロモン王の財宝を求めて、南太平洋に探検に来たという歴史的事実があるよね。(カモメ)そうですね。ソロモン王の財宝というのは本当にあるかどうか、伝説ですけどね。伝説では、ソロモン王は父ダビデ王の巨大な財宝を引き継いだと言われていますが。(ウツボ)古代イスラエル王国のソロモン王が死ぬと、王国は亡んだ。そのとき、ソロモン王の巨大な財宝も消えていた。それでその財宝が持ち出されたという説があり、世界各地にソロモン王の財宝が隠されているという伝説が生まれた。(カモメ)そのソロモン王の秘宝を求めて、西洋人として初めてガダルカナル島に到達した探検家が、メンダーニャですね。(ウツボ)そうだね。メンダーニャは、ガダルカナル島に上陸し、砂金を見つけた。それをソロモン王の財宝の黄金であると勘違いした。(カモメ)それで、メンダーニャはこの周辺の島々を「ソロモン諸島」と命名したのですね。(ウツボ)そうだね。ソロモン諸島の名前の由来だね。ところで、メンダーニャは、さらに財宝を求めて、周辺の島々に上陸し探し回った。だが、原住民である凶暴なメラネシア人から攻撃を受けて、あきらめて帰還した。(カモメ)その後、このソロモン諸島は一八九三年にイギリスの植民地になったのですね。(ウツボ)そうだね。ソロモン諸島は、オーストラリアの北東にあり、ニューギニアの東に位置する島々だね。(カモメ)ソロモン諸島は、最北西のブーゲンビル島から、南東端のサンクリストバル島まで大小多数の島からなっていますね。有名なガダルカナル島もあります。(ウツボ)現在のソロモン諸島は一九七八年にイギリスから独立した。だが、イギリス連邦であり、英連邦王国の一国だね。だから元首はエリザベス二世で、総督がその権限を行使する。(カモメ)行政府の長は首相で、議会は一院制という政治形態がとられています。人口は約五百二十三万人。九の州と、首都ホニアラの区域で構成されています。(ウツボ)ガダルカナル島は、今はガダルカナル州となっている。(カモメ)そのソロモン諸島で第二次世界大戦に日本とアメリカが死闘を繰り広げることになるのですね。(ウツボ)そうだね。ソロモン海戦は、昭和十七年八月から十一月にかけて南太平洋、ソロモン諸島のガダルカナル島の周辺海域で行われた海戦だ。(カモメ)もともとガダルカナル島は、ソロモン諸島の東部にある風光明媚な緑の島で、ルンガ湾は波静かな恰好の泊地でした。(ウツボ)この平和な島が一大戦場になるとは、誰も予想しなかった。(カモメ)そのガダルカナル島攻防をめぐり、日本とアメリカが、制海権争奪をかけて、太平洋戦争中で、最も激しい水上戦闘を行ったのですね。(ウツボ)だから、その海域には日米多数の艦船が沈没した。それで「アイアン・ボトム・サウンド(鉄底海峡)」の名称が有名になった。(カモメ)強烈な表現ですね。その海域の海底は、一面、沈んだ軍艦という鉄で覆われていると。(ウツボ)勿論、オーバーな表現だが、そういうことですね。太平洋戦争の具体的な話に入りましょう。日本帝国の大本営海軍部は第一段階の作戦が成功すると、ソロモン諸島からニューカレドニア、フィジー、サモア諸島を結ぶアメリカ・オーストラリア遮断作戦を行うことを計画した。(カモメ)それは、オーストラリア連邦を孤立させ、連合国からの脱落を意図していたのですね。(ウツボ)もちろん、そうだが、逆にアメリカ軍が、ソロモン諸島を制圧して強力な航空基地を持つことになると、日本海軍のラバウル基地はもちろん、トラック島にも脅威が及んでくるという不安もあった。(カモメ)オーストラリア連邦は、実は一九三〇年代の後半から、西太平洋の強国、日本の出方にかなり神経をとがらせていましたね。(ウツボ)それは、日本帝国が満州への侵攻(満州事変)から、中国本土への強大な軍事力を行使した日華事変を通して、オーストラリアは日本帝国に大きな衝撃を受けた。それを自国への脅威と捉えて警戒し始めた。(カモメ)中国への日本の侵攻が、いずれはオーストラリア連邦にも及ぶと考えたのでしょうか。次は日本の南方政策の延長線上で。(ウツボ)それは、今の北朝鮮と考えれば分かりやすいけどね。だが、現在の北朝鮮どころではなく、当時の日本帝国はすごい軍事力を有した強大な軍事帝国だった。その日本の人口はオーストラリア連邦の十倍であるし、何しろ、その国民が一体となって、国家の侵略政策を支持しているのだから、オーストラリア人にとって日本帝国は非常な脅威だった。