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カテゴリ:百人一詩
「狐女子高生」
文月悠光 つむぎたいのは、その不規則な体温。 手肌をつらぬく つむじ風。 プロセスは机の隅に押しやって 唇に海を満たす、吐く。 たおやかに 狂いだす血潮。 この学校ができる前はね ここで狐を育ててたんだって。 そう告げて、 振り向いたあの子の唇は、とっても青い 狐火だったね 覚えてる。 (狐女子高生、養狐場で九尾を振り回す。 (狐女子高生、スカートを折る。 (短きゃなお良い至上主義。 (十八歳は成人である由、聞きつけて (選挙に行った受験生。 (単語帳の陰から盗み見立候補者、 (あいつ尻尾がないぜ。 (ごまかすね、襟巻き税。 はじめから あらゆる脈絡と絶交していたけれど ついに教室の窓を叩き割り、 夕陽の破片を 左胸に食い込ませる/深々と! 鼓動が血に濡れているなんて いつ どこで だれが決めたの。 わだかまる窓という窓を吹き飛ばしたら、 カーテンだけが私の翻る顔になった。 壁に抱きついたまま、 風を装い、”私”は踊る。 ネクタイ結んであげる、の一声で 化かされる新卒教師はものたりない。 おかげで停学処分を免れて、 青い口紅 倒れたほうへ いらんかね いらんかね 油揚げを売り歩く放課後。 最後の一行が笑いを誘いますが、そこに至るプロセスはアルチュール・ランボーの詩を思い起こさせます。若さゆえの怒りの詩にこれほどまでに惹かれるのは、鑑賞している当人が、すでに失ってしまった若さに、郷愁を感じているせいでしょうか。二度と再び見ることのない故郷に。 大人になるまでに読みたい15歳の詩 6 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019.09.29 23:34:22
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