カテゴリ:民衆の歴史
デパートの誕生 番外編 ユニクロ(第2回)
繊維業界は、その川上の紡績・生糸業界から、川下のアパレル業界までを含めて、糸偏業界と称することが多いようです。この業界、とりわけアパレル業界は知る人ぞ知るで、とりわけ利益率の高い業界なのです。 私が大学を卒業する60年代の中頃は、そうした糸偏業界がまだまだ元気な頃でしたから、就職した仲間の中には、日清紡や東レといった川上の紡績業界へ、或いは三陽商会、オンワード樫山、レナウンといったアパレル業界など、糸偏業界を選択した組がかなりの数にのぼりました。 こうした友人たちからの耳学問のなかで、強く印象に残っていることの一つが、アパレル業界の祖利益率の高さです。アパレル業界は流行を作ることで高い利益を享受する。しかし、流行は水物なので、上手く流行を作り出せなかったりすると、大きな損が出るというのです。今年はどの色が流行するか。流行が分かってから製造するのでは手遅れです。ですから、仕掛け人の判断で、何色かを大量に確保しておく。 そして、流行色を見定めたら、それ以外の色物をいかに他社より早くバーゲンにかけて売り切ってしまうかが勝負だというのですね。そこには企業人というより、相場師に近い姿がありました。その結果どうなるか。勝負に勝った流行の服飾には、投売りした保険用の製品の損失をもカヴァーする高い粗利益が、上乗せされることになる。そういう仕組みでしか成り立たない業界だというのです。 するとどうなるか。アパレル業界から商品を仕入れ、売れ筋の商品を扱う小売店もまた、高い利益率を享受する仕組みをとります。とりわけ、デパートのように立場の強い大手小売店は、売れ残りの引取りをメーカーに要求したり、店員の派遣を強要することも出来るのですから、粗利益率はさらに高くなります。 現在のデパートを見てください。夕方のデパ地下や物産展、そして特売場を除くと、店内のほとんどは閑古鳥が鳴いています。それでも特に婦人服の売り場は相対的に広い売り場を確保しています。その秘密は、この暴利ともいえる高い利益率にあるわけです。 商品によりますが、おそらく平均で3割から5割引きで売っても、トントンないしそれ以上ということなのでしょう。ともかくその他の商品に比べると、アパレル業界の利益率は驚くほど高いのです。ですから、そこにはユニクロ商法が成功する余地があったということなのですね。 続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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