本のタイトル・作者
サボる哲学 労働の未来から逃散せよ (NHK出版新書 658 658) [ 栗原 康 ]
本の目次・あらすじ
第1章 笑殺の論理ー『鬼滅の刃』とはなにか?
第2章 アナキスト、モノを買うー「いきなり!ステーキ」がいきなり燃えた
第3章 いまこの場を旅して住まうー痕跡のアナキズム
第4章 海賊たちの宇宙技芸ーたたかうべきだ、逃げるために
第5章 アンダーコモンズ!-『ランボー、怒りのハリエット』
第6章 やっちゃえー労働の動員か、それとも生の拡充か
第7章 懐かしい未来の革命を生きろーアナーキーの自発
第8章 失業者のストライキー所有じゃねえよ、居住だよ
第9章 未来をサボれー大杉栄、日本脱出の思想
第10章 機械を破壊し、機械になれーフリー・フリーダム!
引用
みんなが賃金奴隷にさせられているのに、その収奪自体も問われない。いまや資本主義を生きるのは大前提だ。問われるのは、そのなかでの不平等。搾取だけだ。
だから、その大前提を疑おうとすると嘲笑の的になる。おまえ、大人になれよ。言っていることはわかるけど、歴史的事実なのだからしかたがないと。世のなかの流れは変えられない。後ろをふりかえるな。前だけみてろ。未来のことだけ考えて生きるのだと。しかし、その大人たちのせいで見過ごされてきたことがある。収奪は歴史ではない。現在進行形だということだ。言いかたを変えておこう。わたしたちの生はたえず資本主義をはみだしている。それが収奪されてしまうのだ。
感想
2021年275冊目
★★★★
アナーキストの作者による本。
42才、年収200万円で、週1日大学の非常勤講師をやりながら生活している。
座右の銘は「はたらかないで、たらふく食べたい」。
働きたくない、が一貫していて面白かった。
海賊とラッダイト運動のくだりは物語のようで、ワクワクしながら読んだ。
いやもう、働きたくないやん。ほんま。
何でこんな働かないとあかんのん?
朝から晩まで本読んでたいのに、なんで出来へんの?
私がやってる仕事に、意味なんてないのに。
本の基調は
・
女たちのテロル [ ブレイディみかこ ]
みたいで、ブレイディみかこさんが好きなら、著者の口調も気に入るかも。
あと、
・
「山奥ニート」やってます。 [ 石井あらた ]
や、マーク・ボイルの『僕はお金を使わずに生きることにした』を思い出した。
この本の中で、資本主義と奴隷制度について関連付けて語られていて、「そういう関係にあるのか」と瞠目した。
黒人奴隷問題、女性差別問題、資本主義、労働…。
自分がこれまで引っ掛かって興味を持って読んで来たこと、その断片的な知識のモザイクが、徐々に一枚の絵を作り上げていくこの感じ。
もうすこしで何が描かれているのか見えそうな、この感じ、たまらない。
私自身は資本主義社会の奴隷で、労働者根性丸出しで生きている。
でも、ふと課長や課長補佐と話した時の「噛み合わなさ」について思った。
それって、「労働」について根本的にどうとらえているか、ということなのかもしれない。
おかしい。こんなシステムは、生き方は、おかしい。
こんな働き方が、生き方がしたいわけではない。
しかしそれは、彼らの耳には「この職場の環境と、現在の職務内容に不満がある」と聞こえたようで、私は窘められた。
違うのだ、と私は言いたくて、でもそれをうまく伝えられなかった。
私が嫌なのは、この世界のシステムなのだ。
その中で、自分がその一部に加担して自分を奪われていくのが嫌なのだ。
それは、そのシステムにがっつり組み込まれて金を貰って置いて言える義理ではないのだろうか。
そこから下りないと、言えないんだろうか。
「ちっぽけな僕の人生を、誰にも渡さないんだ。」
その昔、本でこの言葉を見かけてから、ずっと繰り返し繰り返し、胸に留めている。
本の中で、「やりがいの搾取」は奴隷制度の中での声なのだ、と言っていた。
奴隷制度そのものに意を唱えるそれは、この状況を「収奪」と呼ぶ。
今のこの社会の中にあって、会社の中にいて、私はどうすれば自分を奪われずに生きていけるんだろう?
下りればいい。それは簡単で、難しい。
本当はもっと、問題はシンプルなはずなのに。
読了メモ。
これまでの関連レビュー
・
女たちのテロル [ ブレイディみかこ ]
・
「山奥ニート」やってます。 [ 石井あらた ]
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