【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

近代日本文学史メジャーのマイナー

近代日本文学史メジャーのマイナー

Calendar

Archives

Recent Posts

Freepage List

Category

Profile

analog純文

analog純文

全て | カテゴリ未分類 | 明治期・反自然漱石 | 大正期・白樺派 | 明治期・写実主義 | 昭和期・歴史小説 | 平成期・平成期作家 | 昭和期・後半 | 昭和期・一次戦後派 | 昭和期・三十年代 | 昭和期・プロ文学 | 大正期・私小説 | 明治期・耽美主義 | 明治期・明治末期 | 昭和期・内向の世代 | 昭和期・昭和十年代 | 明治期・浪漫主義 | 昭和期・第三の新人 | 大正期・大正期全般 | 昭和期・新感覚派 | 昭和~平成・評論家 | 昭和期・新戯作派 | 昭和期・二次戦後派 | 昭和期・三十年女性 | 昭和期・後半女性 | 昭和期・中間小説 | 昭和期・新興芸術派 | 昭和期・新心理主義 | 明治期・自然主義 | 昭和期・転向文学 | 昭和期・他の芸術派 | 明治~昭和・詩歌俳人 | 明治期・反自然鴎外 | 明治~平成・劇作家 | 大正期・新現実主義 | 明治期・開化過渡期 | 令和期・令和期の作家
2016.01.23
XML

  『漱石の記号学』石原千秋(講談社選書メチエ)

 「記号学」と、タイトルに書いてあります。
 ……、………うーん、こういうのって、よくわかんないんですよねー。
 新しい文芸批評理論にわたくし、ぜんっぜんっ、ついていけないんですよねー。

 かつて、もはや「古典」になっていそうな筒井康隆の『文学部唯野教授』を読んだ時も、作品中に描かれていた文芸批評理論がさっぱりわかりませんでした。(あ、だんだん思い出してきました。あのあたりから私は、何もわからない文芸批判理論を逆恨みして、自分では夏目漱石の「自己本位」のつもりで、勝手な読書感想文を書き出したんですよねー。)

 それに、新しい文芸批評理論って、カタカナが多くありません? あれやめて欲しいんですけどー。パラダイムとか、コンテクストとかいうの。……。
 「コード」なんて単語でも、私は読んでいてなんでここで電気のコンセントが出てくるんだよと思ってしまうほどであります。(威張るなよ。)
 やれやれ、困ったもんでありますなー。(自分がロートルなだけだろう。)

 と、思いながら読み始めたのですが、そしてやはり片仮名交じりの文芸理論も出てきたのですが(前半に多かったように思います)、でも筆者が述べている(のだろう)ことは、なんとなくわかりました。

 よーするに(私の「よーする」が少しくらいはツボに当たっているとして)、小説に描かれた内容は、書かれた時の時代背景をしっかりと精査し直すと、「今」読んで感じるものとかなり違うことがあるよ、と、まぁ、そんなところでしょうか。(我ながらかなりアバウトなまとめ方ですなぁ。)

 実は私は、過去に関川夏央氏が漱石の『坊っちゃん』について書いた文章を読んだ時に大いにそんなことを感じ、そして感心した経験があるんですね。

 それは、「坊っちゃん」が卒業した「物理学校」(現在の東京理科大学)について触れられた部分ですが、作中には「坊っちゃん」は下から勘定した方が便利な成績順でありながら三年したら自然に卒業してしまったと書かれています。
 関川氏の考察によりますと、その「物理学校」は、入学は無試験であったものの進級や卒業については極めて厳格で、三年で卒業する者は入学時の十分の一ほどであるということでした。

 ということは、実は「坊っちゃん」は極めて出来のいい学生であったということになりますね。……うーん、これは、我々が持つ「坊っちゃん」のイメージとかなり違いませんでしょうか。

 さらに関川氏は、この「物理学校」の実際の状況について、「このような背景は、当時の小説『坊っちゃん』の読者には諒解されていたことだと私は思う。」と書き切っています。
 うーん、使い古された表現ながら、「目から鱗」とはこんな事を指すんじゃないでしょうかねー。

 例えば本書にも、田山花袋の『蒲団』のことがこんなふうに書かれてあります。
 それは、『蒲団』は主人公の中年の小説家の「性欲の告白」の物語であると一般的には理解されていますが、実は『蒲団』が書かれた当時には「堕落女学生」というコード(!)がすでに世間に広く流布されていたというものです。

 そこに着目すると、主人公小説家の女弟子の行動を、肯定的に見ようが否定的に見ようが、作品の中心テーマであると思われていた主人公の「性欲の告白」の重みは、相対的にかなり軽くなり作品の佇まいは大きく変わってきます。
 なるほど、こういった発見は、実に刺激的ですよねえ。

 一方、本来の漱石作品については本書にどのようなコードによる解析があるかというと、「神経衰弱」「自我」「主婦」などいろいろあるのですが、「長男」と「次男」をコードにして、それらの言葉の当時の社会的認識と実態を元に、『坊っちゃん』『それから』(「次男」の物語)、また『行人』(「長男」の物語)などを捉え直しているのが秀逸でした。
 (一つのトリッキーな読みとして、『行人』の主人公長男の「一郎」が継子ではなかったかという仮説は、なかなかスリリングで面白かったです。)

 最期に少しだけ不満を述べますと、この筆者の文芸評論に時々見られる「味噌もくそも一緒」という強引さがやはり本書にも見られます(筆者はそれもわかって書かれているとは思いますが)。
 しかしトータルで見ると、なかなか刺激的な文芸評論でありました。


 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓

 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2016.01.23 15:40:10
コメント(0) | コメントを書く
[昭和~平成・評論家] カテゴリの最新記事


PR

Favorite Blog

2024年1月の読書まと… New! ばあチャルさん

ロディ・ボガワ  ス… シマクマ君さん

Comments

aki@ Re:「正調・小川節」の魅力(01/13) この様な書込大変失礼致します。日本も当…
らいてう忌ヒフミヨ言葉太陽だ@ カオス去る日々の行いコスモスに △で〇(カオス)と□(コスモス)の繋がり…
analog純文@ Re[1]:父親という苦悩(06/04)  七詩さん、コメントありがとうございま…
七詩@ Re:父親という苦悩(06/04) 親子二代の小説家父子というのは思いつき…
√6意味知ってると舌安泰@ Re:草枕と三角の世界から文学と数理の美 ≪…『草枕』と『三角の世界』…≫を、≪…「非…

© Rakuten Group, Inc.