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2023/12/09
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カテゴリ:私の本棚




商品を見る→夏目漱石 こころ 407円

今日は『漱石忌』ですね。
12月9日は、夏目漱石が亡くなった日であり
俳句の世界では『漱石忌』は冬の季語になっています。

明治から大正時代にかけて活躍した夏目漱石の
代表作は『吾輩は猫である』、『坊っちゃん』など
馴染みの深い小説がありますが
私が一番好きなのは『こころ』です。
これは中学生の時の『こころ』の読書感想文です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
先生は学生の頃、信頼している叔父に裏切られて
財産を取られてしまった。
そのことで、人間そのものへの猜疑心を持ち
一種の神経衰弱になってしまった。

いつの時代にも、裏切りや背信行為は日常的に行われている。
だから、たった一度の裏切りによって、
『彼らが代表している人間と言う者を一般に憎むことを覚えたのだ』
という程の人間不信に陥ったのは
先生が潔癖な理想主義者だったからではないかと思う。

私がもし、信頼している人間に裏切られたら
先生と同じように人間不信に陥るのだろうか。
新聞紙面を賑わしている政治家の裏切りよりも
信頼している身内や友人の裏切りの方が
我々にとってはむごい仕打ちと言えるのかも知れない。

先生の人間不信は、【初対面の時から人を信用する】
下宿の奥さんとお嬢さんによって一度は拭われた。
ふたりは、先生の疑い深さに最初から取り合わなかったので
神経がだんだん静まってきたのである。
先生はそのお嬢さんに対して、ほとんど信仰に近い愛を持っていた。

先生は苦学生の友人Kを下宿に連れてきて同居を始めた。
抽象的な学問の世界のみを追求するKは
精神的な向上にすべてをかけることによって
自分の生きる証と誇りを持続している。

Kは手首に数珠をかけ、親指でひとつ、ふたつと勘定する。
輪になっているものを一粒づつ数えてゆけば
どこまでいっても終局はない。
この情景は、精神的向上を志向するKの内面の象徴でもある。
Kの禁欲的な姿勢は先生以上であった。

数珠の珠をを無限に数え続けるというKの世界を
少しでも知りたくて、私もその真似をしてみた。
無言で数珠をつまぐっていると、
自分の気持ちが内へ内へと向かっていくように感じられた。
Kの関心はすべて自己へ向かっていたが、
もしかしてこの性癖がそれを助長していたのではないだろうか。

Kが下宿先のお嬢さんに恋をしたとき
Kは自分がこれまで否定してきた弱い人間であることを
自覚したのだと思う。

若い男性が、女性に興味を持つのはごく自然なことだ。
しかし、禁欲的な理想主義者で
世俗的なものを拒否しているKにとっては
異性に惹かれること自体が挫折だったのだと思われる。

自分の内面をさらしたことのないKが
『お嬢さんのことを好きだ』と先生にうち明け
自分の弱点をさらけ出して先生の意見を求める。

しかし、先生はKを裏切ったのである。
先生は仮病を装って奥さんと二人になる機会を作り
Kを出し抜いて結婚の申し込みをした。
Kは奥さんの話によって先生の裏切りを知り
その二日後に自殺をした。

Kが残した遺書を見れば明らかなように
友人の裏切りや失恋が、根本的な自殺の要因となった訳ではない。
精神主義を貫徹し得なかった無力感と空虚の意識
そして人間に対してあらゆる面で絶望したからだと思う。
Kは小さなナイフで
頸動脈を切ってひといきに死んでしまった。

モノクロ映画のように静かな物語の中で
闇夜に迸ったKの血潮にだけ色を感じた。
唐紙の血痕、そして、Kの首筋から一気にほとばしった血潮は
無彩色の風景の中で、そこだけが真っ赤に見えたのである。

人間の血の勢いの激しさに驚いた先生は
この時、自分の運命の恐ろしさを
深く感じたのではないだろうか。

お嬢さんを手に入れることは
先生に至福の状態をもたらす筈だった。
しかし、思いが叶って彼女を手中にすると
夫婦生活には黒い影がついてまわった。

お嬢さんを奪ったあげく自殺に追いやったKの黒い影である。
先生は自らの生涯を『私』という学生に宛てた
手紙の遺書によって告白し、自分の命を絶った。

先生は、罪と良心の間の葛藤に苦しんだあげく
最終的な償いとして自殺を選んだのだろうか?
『Kの歩いた道をKと同じように辿っているのだという予覚』
を持ちつつ、Kに殉じたのだろうか?

私は、先生の自殺はKを死なしめた罪悪感からではないと思う。
結局、Kも先生も孤独の果てに死を選んだのだと思った。
それは、ひとりぽっちの孤独ではなく
人間が生存していること自体による
理由のない孤独なのだろう。

『さびしい、さびしい、さびしい』
と、二人の悲鳴が聞こえるような気がする。
Kと先生にとって
死ぬことは安息だったのではないだろうか。


 

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Last updated  2023/12/09 08:58:54 PM
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