インド世界を読む
地球人スピリット・ジャーナル2.0につづく 「インド世界を読む」 岡本幸治 創成社 2006/10 一応の目安をそれぞれのカテゴリで100冊と思ってきたが、100冊だと、どうも座りが悪く、108冊に近づくとなんとなく落ち着くようだ。すでに「ブログ・ジャーナリズム」は108に達成し、「地球人スピリット」は107冊。この一冊は、どちらかというと「ブログ・ジャーナリズム」に近いのだが、読み方を帰れば「地球人スピリット」にもなるので、そちらに加えて108冊として、このカテゴリも終了とする。 スピリットというと、どうも実体のないもの、現実から離れたものととらえがちであるが、実際には、実体と表裏一体、現実の只中にあるものこそをスピリットと呼ぶべきなのである。だから、この「インド世界を読む」はある意味、まさににスピリチュアリティ溢れる読み物だ、といってもいいだろう(なんちゃんて、故事付け)。 著者は、1970年代後半の一年間の間インドに長期滞在したというから、時代的には私と同じような直にインド体験をしていたことになる。もっとも1936年生まれだから、当時でも40歳過ぎだったろうから、それなりに大人の視点でインドをみていたはずだ。 確かにインドのITソフト産業の急成長は注目に値する。しかしシンガポール程度の小国家ならいざ知らず、多くの貧困層を抱えた世界第二の人口大国が、ITだけで雇用を確保し、みんなで食っていけるはずがないではないか。調子のよいことを言ってくれるIT信者がいるものだなぁ、というのが率直な感想であり、これは今も変わっていない。p22 この辺は先日読んだ島田卓の「インドビジネス」とほとんど同じ意見だ。その他、インドにおける教育の問題や、産業構造の問題、人口の問題など、かなりの部分において両書は重なるところがある。 2006年の速報値では人口はすでに11億人台に達したと考えられるので、インドは信者数においては、世界有数のイスラム国家でもあるということなのだ。しかしインドをイスラム大国という視点からとらえる見方は、日本人にはまったく欠けているのではないか。p8 その数日本人を超える一億三千万に達するインド国内のイスラム教徒に対する理解は確かに進んでいないとは言える。しかし、先日読んだ。オサマ・ビン・ラディンの過激な発言についてだけでなく、ムスリム社会については、私も理解できないことが相当に多い。 国際会議を成功させるために議長が心得るべき要諦は「日本人にしゃべらせ、インド人を黙らせることである」というジョークがあるのは、さもありなんと思ったことがよくある。p126 なんてところも「世界の日本人ジョーク集」とカブッているところがある。 このような報告書、とくにゴールドマンサックス社お「BRICs報告」は、経済至上主義の日本にとっても関心の深い情報であるだけに、日本の新聞その他のメディアでも大きく扱われ、従来のインド観を短期間で変化させることになった。p33 ここは「BRICs新興する大国と日本」とダブる。「アンベードカルと『アウトカースト』の保護・優遇」p141あたりは「アンベードカルの生涯」と重なってくる。 私が密かに温めている夢がある。それは二十世紀の初頭に訪印してタゴールやヴィベーカナンダなどと交流し、インド思想の強い影響を受けて岡倉天心が執筆した「東洋の理想」に書かれている有名な一説に触発されたものである。天心は東西文明の興味深い比較を行い、東洋の特質を、人生の手段ではなく人生そのものの意味の探求に捧げたこと、それによって世界の大宗教のすべてを生み出したことにあるとした。p233 さぁ、まさにこの辺が「地球人スピリット」に関わってくる部分であり、108個目のエントリーとしては、この本がふさわしいであろう。結論としてでたわけではないが、総じて平らかにまとめられた一冊と言っていいだろう。