テーマ:洋楽(3285)
カテゴリ:洋ロック・ポップス
20年を経て、『ガンボ』で示された路線への回帰
1992年に発売され、表題通り、ドクター・ジョン(Dr. John)がニューオーリンズ音楽への回帰を図ったのが、本盤『ゴーイン・バック・トゥ・ニューオーリンズ(Goin’ Back to New Orleans)』である。ニューオーリンズの音楽というと、様々な文化と音楽ジャンルが交錯する場に成り立っているという印象を持つ人も多いだろうが、実際、本盤もジャンルの枠に捕えられない(あるいは容易に当てはめられない)受け入れられ方をした。例えば、ビルボードの全米トップ200には入らなかったものの、ジャズのアルバム・チャートで1位になった。また、自身2度目のグラミー賞受賞を果たしたが、その選出ジャンルは、最優秀トラディショナル・ブルース・アルバム賞だった。 表題が示す通り、ジャケット写真も“ニューオーリンズ回帰”そのもので、マルディグラ・インディアンの衣装に身を包んだドクター・ジョンの姿となっている。演奏内容はニューオーリンズのミュージシャンを多く起用し、ニューオーリンズの伝統的ナンバーを多くカバーしている。アート・ネヴィルやアーロン・ネヴィルら地元出身のネヴィル・ブラザーズのメンバーが4曲(1.、3.、8.、18.)に参加しているのも目を引く点である。 3~4分の演奏で都合18曲も収録されていて、聴きごたえも十分なのだけれど、何曲か注目したい曲を個人的好みでピックアップしてみたい。 1.「リタニー・デ・サン」は、ドクター・ジョンのクレジットだが、19世紀半ばに活躍したルイス・モロー・ゴットシャルク(ゴッチョーク)の曲を下敷きにしたもの。3.「マイ・インディアン・レッド」は、マルディグラの伝統曲で、1940年代にダニー・バーカーも録音している「インディアン・レッド」のカバーである。4.「ミルネバーグ・ジョイス」は、“ジャズとスウィングの創始者”を自称していたジェリー・ロール・モートンのナンバー。 ルイ・アームストロングの演奏で有名な6.「ベイズン・ストリート・ブルース」は、スペンサー・ウィリアムズの曲で、本盤には同じくこの人による2.も収められている。10.「おやすみアイリーン(グッドナイト・アイリーン)」はレッドベリーの1933年の曲(元のタイトルは、単に「アイリーン」とのこと)。インスト曲の11.「フェス・アップ」はドクター・ジョンの作曲だが、かのプロフェッサー・ロングヘアーに捧げられたナンバーとのこと。13.「アイル・ビー・グラッド・ホエン・ユア・デッド」は1931年のサム・シアードの曲で、同じくルイ・アームストロングの演奏で知られる。 デイヴ・バーソロミューによる16.「ブルー・マンデイ」のほか数曲(15.と17.)はファッツ・ドミノで知られる曲であるが、ドクター・ジョンはこの二人のコンビをレノン=マッカートニーに次ぐコンビと評していたという。表題曲の18.「ゴーイン・バック・トゥ・ニューオーリンズ」はジョー・リギンズとハニードリッパーズの曲で、上記の通りネヴィル・ブラザーズとの共演での演奏は必聴。 とまあ、長々と曲を挙げることになってしまったけれど、とにかくニューオーリンズ音楽の間口は広く、それを受け止めるドクター・ジョンをはじめとする演奏者たちの器量も大きい。“19世紀後半から20世紀半ばまでのニューオーリンズ音楽祭典”と呼んでもいいようにすら思うヴァリエーションである。『ガンボ』のリリースが1972年、本盤が1992年と20年の間が空いているが、ドクター・ジョンが亡き人となったいま考えると、これら2作品は制作年代こそ離れているものの、内容的にはぜひ併せて聴きたい彼の遺産ということになるのではないだろうか。 [収録曲] 1. Litanie des Saints 2. Careless Love 3. My Indian Red 4. Milneburg Joys 5. I Thought I Heard Buddy Bolden Say 6. Basin Street Blues 7. Didn't He Ramble 8. Do You Call That a Buddy? 9. How Come My Dog Don't Bark (When You Come Around) 10. Goodnight Irene 11. Fess Up 12. Since I Fell for You 13. I'll Be Glad When You're Dead, You Rascal You 14. Cabbage Head 15. Goin' Home Tomorrow 16. Blue Monday 17. Scald Dog Medley/I Can't Go On 18. Goin' Back to New Orleans 1992年リリース。 輸入盤 DR. JOHN / GOIN’ BACK TO NEW ORLEANS [CD] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019年08月03日 16時04分35秒
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