ボブ・ディラン 『武道館(Bob Dylan at Budokan)』(2/2)
日本武道館の名を冠した2枚組ライヴ盤(後編)(前編からの続き) さて、2枚組の本盤の2枚目(LPではC面に6曲、D面に5曲)を見ていきたい。最初のII-1.「風に吹かれて」は、前回記事にも書いたように、元の弾き語り的な演奏とは異なり、バンド演奏向けのアレンジ。これもまた1枚目のところに書いたように、淡々と曲を披露していくスタイルは個人的には好感を持っていて、II-2.「女の如く」やII-5.「見張塔からずっと」が収められているのも筆者としては有難いところ。 2枚目の後半に入ると、皆が聴きたがっていたであろう曲のオンパレードという感じが一層高まっていく。筆者的には外してほしくないII-7.「オール・アイ・リアリー・ウォント」に始まり、II-8.「天国への扉」もきちんと収録されている。アルバムの最後は10.「いつまでも若く」、そして締めくくりとして11.「時代は変る」。21世紀の今聴いても、この時代(1970年代後半)に武道館でこのセットリストのライヴをじかに見たかった、と思わせてくれる。ついでながら、現在では2023年11月に発売された『コンプリート武道館』(CD4枚組、LP8枚組)が出ていて、2日分のライヴすべてを聴くこともできる。 以上のように、本盤は、何か実験的な試みや、野心的な工夫を企図したという類のものではない。バンドでの演奏用アレンジになっているとはいえ、そうした意味では、既存の曲を新たな方法で楽しむという要素は希薄と言えるのかもしれない。遠く離れた日本のファンに本物のボブ・ディランの集成を見せる(そしてその音源がライヴ・アルバム化された)というものと言ってしまえば、それまでなのかもしれない。実際、ディランは後年のインタヴューで“手を引っ張って日本に連れて行かれライヴ盤を作らされた”といったように答えている。けれども、これこそが当時のファンの聴きたいものでもあったという部分があったのだろう。 なお、本盤『武道館』は、アルバム・チャートでは、全米13位となり、一つ前のライヴ盤(『激しい雨』)の17位を上回った(全英では前作が3位で本作が4位)。デビューから15年以上のキャリアを積み重ね、堂々のレパートリーを披露するディランの姿が記録された、初めてディランに触れる人への入口にも好適な盤と言えるんじゃないかと思う。[収録曲]〔Disc 1〕1. Mr. Tambourine Man2. Shelter from the Storm3. Love Minus Zero/No Limit 4. Ballad of a Thin Man5. Don't Think Twice, It's All Right (以上、LPのA面)6. Maggie's Farm7. One More Cup of Coffee (Valley Below)8. Like a Rolling Stone9. I Shall Be Released10. Is Your Love in Vain?11. Going, Going, Gone (以上、LPのB面)〔Disc 2〕1. Blowin' in the Wind2. Just Like a Woman3. Oh, Sister4. Simple Twist of Fate5. All Along the Watchtower6. I Want You (以上、LPのC面)7. All I Really Want to Do8. Knockin' on Heaven's Door9. It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding)10. Forever Young 11. The Times They Are A-Changin' (以上、LPのD面)1978年リリース。 武道館 [ ボブ・ディラン ] コンプリート武道館 (完全生産限定盤 4CD) [ ボブ・ディラン ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓