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ヴェネツィアの獅子たち

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Reiko Fujiwara Marini

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2007/01/25
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カテゴリ:暮らし
 さて、ヴェネツィアでは一切の自動車、バイク等の車両(自転車も含む。ただ広場等で遊ぶ幼児用の自転車は黙認されている)が存在しないため、移動や物の運搬はもちろん、救急車やパトカー、消防車にゴミ収集車、霊柩車にいたるまですべて船です。
 車でなくて船というだけなので、Canal Grande(カナルグランデ=大運河)で、警察がスピード違反の船をピピッーとホイッスルで止めていたり、また、サイレンを鳴らして猛スピードでやってくる救急船を周りの大小の船が端に寄って通す、というような状景はここでも同じです。

 船体がグリーンで中央部に小型のクレーンがついているゴミ収集船は、平日の朝八時頃から十時頃のあいだに街を歩けば、いたるところで目にするでしょう。環境局の職員が、貨車を押して細い路地を出たり入ったりして集めたゴミは運河に待機している収集船に横付けされ、クレーンで貨車ごとつり上げると、貨車の底が左右に開いてゴミが船に収納されるというしくみです。
 収集されるまでのゴミ、時間外に出されて収集されないゴミを、ここでは猫やカラスではなくカモメが狙っています。カモメはハトを威嚇しつつ、ハトはそれでも隙をねらい、ゴミの袋をつついて食べ物をさがします。パンのかけら程度では騒がないカモメも、魚の食べ残しや、生ハムやサラミなどを見つけると興奮してキーキー鳴いて独占しようと必死です。翼を広げて他を排除するのに必死になるあまり、獲得したお宝がおろそかになっていてちゃっかりハトがつついてたりして、急旋回して戻ってきたりと、彼らの生存競争もそれなりに大変そうです。それでも彼等にとってヴェネツィアは、島全体がラグーナに浮かぶバイキング形式のレストランでしょう。

 カモメたちのブランチが済んだ後、石畳に散乱したオレンジの皮やペットボトルなどが風に飛ばされて運河を流れていく様は、なんともいえない虚しさと哀しさを感じさせます。





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Last updated  2007/01/25 07:05:35 PM
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