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2009.08.18
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カテゴリ:住宅革命
島根に来て十日が過ぎた。
すでに明け方は涼しくなり、秋の深まりを実感させてくれる。
大自然の中で働いていると人間本来の生き方をあらためて考えるようになる。
自分の生き方は間違っていない。
今を生きているが、今生きる事が未来を作っている。
未来のために生きているのではないが、未来は、今という行動が連続した積み木のピラミッドの頂上のように、今は未だ空中に浮遊している。

工事現場では赤とんぼがのんびりと飛び、鳥たちは勝手気ままに歌っている。
僕と高山は一週間かけて外壁を張り終える事が出来た。
外壁は島根県自生の杉板を下見張りし、キシラデコールのスブルース色で塗装した。
杉材は乾燥によって幅がかなり縮むから、取り付ける前に塗装を済ませておき、乾燥を待って貼り付けていった。
外壁内の水分が乾燥しやすいように、24mm厚の通気胴ぶちで外部通気層も確保した。
この辺り一帯は、昆虫が多いから、通気層の下部にはステンレス製の防虫網も忘れずに取り付けた。

 僕が島根に来て4日目に高山は僕をドライブに誘ってくれた。
ドライブといってもダイハツハイゼット軽トラック4WDだ。大の男が二人でドライブするにはちょっと乗り心地が厳しい。高山は、愛車の乗り心地は一向に気にせず、どんどん山道を登っていく。
「どこへ行くんだ?」という僕の質問には答えず、鼻歌交じりで軽快に飛ばしていく。
一時間半ほど走って到着したところは、山深い谷あいの平坦地で、そこだけが辺りと違う雰囲気の世界を作り出していた。鉄筋コンクリート製の円形の、とても背の低い建物が2棟建っている。高山は、駐車場脇の小屋で入場券を買い、「こっちだ!」と、手招きして、件の背の低い建物に向かって歩いてゆく。
看板には「三瓶小豆原埋没林」と書かれている。
「まいぼつりん?」僕は意味もわからず高山の後について背の低い建物に入っていった。
内部に入ったとたんに僕は建物の背が低かった理由を理解した。そこには、露天掘りした巨大な穴をコンクリートで固めた地下空間が広がっていたのだ
僕たちは20メートルほど階段を下りていった。階段を下りるにつれて気温が下がっていく。次第に全貌が見えてくる。そして僕は、地下の冷気の中に立つ巨大な杉の古木を目の当たりにした。直径約1.5メートルの古木はしっかりと根を張り、自立している。3500年ほど前、縄文時代後期、三瓶火山が噴火し、火砕流や火山泥流(土石流)で自生していた巨木が立ったまま埋没し、現代になって発掘されたものだった。表面は火砕流のためにかすかに炭化している。縄文時代から地下に埋もれたまま腐らずに耐え続けたのだった。高山は地下で3500年の孤独に耐えた杉の木を僕に見せたかったのだった。
「シード、俺はここに来ると元気が出るんだ。この杉の木を見ているとどんなに孤独でもがんばれる気がしてくる。だから、俺の家には、島根の杉を使いたいのだ。構造材だけでなく、仕上げ材も地元の材料で作りたい。」高山の目は少し濡れているようだった。

駐車場に戻る途中、僕は売店で古代杉の欠片で作った箸を買った。3500年前に枯れたその杉の箸は、今でも、酒樽の杉で作られたかのように若々しい香りを湛えている。なんという生命力だろう。僕が嗅いだのは、縄文時代の臭いなのだ。
帰り道、ダイハツハイゼット軽トラック4WDに揺られながら、僕の心は遥か3500年前の世界を旅していた。

埋没林






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Last updated  2009.08.18 19:26:30
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