カテゴリ:アート
オーストラリアのアボリジニの画家であるエミリー・
ウングワレーの回顧展。 先日の美の巨人たちで放映されたばかりであり、彼女 の映像を見て、この画家のイメージをつかむことがで きた。80歳を過ぎてから絵筆を持つようになった事 由もよく分かった。 美の巨人たちの最後のナレーションが印象に残った。 「絵とは何か?誰のものなのか?どうして人は描くの か?」これは、松下電工汐留ミュージアムでやってい る「アールブリュット」の画家にも言えることだが。 さて、彼女の絵は、装飾画であると思った。略歴を見 ると彼女はもともと、儀式のためのボディ・ペインテ ィングや砂絵を描いていたようで、やがてバディック をはじめたとある。絵もこの延長であると思うとすん なりと理解できる。アクリル絵の具という彼女にとっ ての新しい素材と出会い、新しい表現活動を始めたのだ。 族長でもあった彼女は、絵が売れると一族が豊かにな り、新しい絵の具もキャンパスも買えるので嬉しいと いうようなことを語っていた。アポリジニはもともと 所有という考えを持っていなかったので、彼女はただ 純粋に絵を描いた。 そんな彼女の画風の変遷を辿るのも面白い。点描から 線へ、そして晩年の広い色面をもつ作品。それでもこ のおばあさんは、自分の故郷の「アルハルクラ」とい う土地を主題としながら一貫して描いている。 ヤムイモの根っ子がぐんぐんと伸びる「ビッグ・ヤム・ ドリーミング」の大作。この絵を描いているお婆さん の様子を想像しながら眺めていると楽しくてたまらな い。地面にキャンパスを置いて、ブツブツとつぶやき ながら、延々と白い根っ子を描いていたのだなぁ。 西洋の抽象画やらプリミティブアートやらの文脈で捉 えようとするから、いろいろ面倒くさくなるのだろう。 やはり、先の「絵とは何か?」という問いに戻ってく るのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[アート] カテゴリの最新記事
おはようございます。
「美術館に展示されている絵画」と 捉えてしまうと、ややこしいことになりますが 単純に純粋に静かに向うのが良いのかもしれません。 難しいことですが。 (2008年06月13日 08時04分55秒)
先日、私も行ってきました。
人生はいくつになっても何かを始めることができる。そんな勇気をもらいました。ビッグヤムドリーミングの前のベンチで随分と長い時間座っていました。いったいどこから書き始めたのかなあ。なんて思いながら。素敵な美術展でした。 (2008年06月14日 01時53分49秒)
本当に人生、どんなことがあるのか
わかりませんね。 このエミリーもグランマ・モーゼスも 80を越えて描くということはもちろん 世間に認められるということがものすごい 驚きです。 (2008年06月14日 05時59分01秒)
大阪に行った時、ちょうど国立国際美術館でやっていたのですが、時間がなかったのとあんまりそそられなかったのでスルーしてました。
でも一村雨さんの感想を読むと、そうか彼女の故郷を眺めに行けばいいんだなーと、なんだか急にオーストラリアの心象風景が見たくなりました。 (2008年06月14日 13時45分20秒)
一村雨さんも、アールブリュットと同じ問いをお感じになったのですね。わたしもです。
私は点描の作品が好きでした。 茶色一色と思っていた砂漠には、驚くほど多彩な色があふれているのですね。 (2008年07月05日 21時45分49秒)
|