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カテゴリ:実践!企業価値評価
一台二役 新市場を開拓 価格下落 歯止め狙う デジカメ キャノン フルハイビジョン動画 ビデオ ビクター 静止画でも900万画素 ■記事への素朴な疑問 ビデオ・デジカメ両市場の縮小、そして価格下落のため、 各社は「一台二役」など新機能追加で需要を牽引し、 販売価格を維持したい考えのようです。 ビデオカメラ市場は以前から伸び悩んでいましたが、 デジカメ市場が2009年に初めてマイナス1%になりました。 2002年は0.2億台程度だったのが、2008年には1.2億台まで、 年平均35%で成長してきた市場ですから、 大きな転換点を迎えているようですね。 本日は、デジカメ大手のキャノンのこれまでの経営状況を見てみます。 以下では、08年度まで直近5年間の両社の財務状況を基に分析します。 キヤノンの決算・財務分析はこちら ■P/Lの視点 07年までは増収増益を続けており、 しかも売上以上に営業利益・純利益の伸びが高くなっていました。 これは製造業では特にそうですが、 本業への集中による累積的な経験効果から固定費の配賦が下がり、 限界利益が向上し、より儲けが高くなっていると窺えます。 利益の質が良いと言えそうです。 しかし、08年は減収減益となりました。各指標は以下の通りです。 ●売上高 07年 4.5兆円 08年 4.1兆円 (前期比-8.6%) ●営業利益 07年 7600億円 08年 5000億円 (前期比-34.4%) ●純利益 07年 4900億円 08年 3100億円 (前期比-36.7%) 有報でさっと確認すると、デジカメ・プリンタの価格下落、 ネットワーク複合機の需要減、そして円高による影響のようです。 次に実際のキャッシュの流れを見てみましょう。 ■C/Sの視点 08年は、上述の利益減で営業CFが2000億円減少し、 FCFも減少しましたが、それまではFCFプラスで額も順調に増加、 内訳として営業CF・投資CFも同様に伸びていました。 08年の営業CFは6200億円、投資CFは4700億円規模です。 07年08年の財務CFは大きくマイナスとなっていますが、 自社株買いのためでした。 まさに増加する儲けの範囲で投資を増やし、 健全に将来への布石を打っているようですね。 それではB/Sを見てみましょう。 ■B/S及び経営効率の視点 これまで増加し続けていた総資産は、07年の4.5兆円から、 08年の4兆円へと減少しました。 構成比に大きな変化はありませんが、金額の内訳は、 現金が3000億円、運転資本が1500億円 、 株主資本が2600億円減少したようです。 売上減少に伴い、 売上債権の回収が減少して運転資本が、 純利益が減少して現金・株主資本が、 それぞれ減少した様子が見て取れますね。 ■まとめ 07年までは利益の質よく、増収増益を続けていましたが、 08年は減収減益となり(P/Lの視点)、 FCFを順調に増加させていましたが、08年に大きく減少し(C/Sの視点)、 現金、運転資本が減少して08年は初めて大きく総資産が減少しました(B/Sの視点)。 業績の減少(需要減・価格下落・円高)が、 各指標へどのように影響しているか、明らかになりましたね。 5月15日で取り上げたソニーの09年決算では、 それまで賄っていたゲーム事業の赤字も補填できないほどに、 ビデオ・デジカメを扱うエレクトロニクス事業が悪化しました。 また、カシオも09年3月期は連結最終損益が赤字転落しました。 本日の記事にある通り、ビデオ・デジカメ市場の成熟の中、 本事業を主力とした収益構造を持つ企業は、 新しい収益源をどう確保するかが課題になって来ているようですね。 キヤノンの決算・財務分析はこちら 以上の分析でご不明な点等ございましたら、 是非シェアーズまでご連絡ください。 感想もお待ちしております! support@shares.ne.jp お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年06月29日 15時56分50秒
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