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カテゴリ:実践!企業価値評価
カーナビ 新興国で日産に供給 クラリオン 市販向けも拡大 ■記事への素朴な疑問 日産自動車がロシア・南アフリカ・中近東などで販売する車に カーナビを供給する契約を、日産と結びました。 09年3月期の地域別売上高は日本、米州、欧州が2ケタ減だった クラリオンですが、アジア・豪州も不振で、新興国市場の開拓が 急務になっているようです。 本日は、カーナビを主力とする同社のこれまでの経営状況を見てみます。 以下では、08年度まで直近5年間の財務状況を基に分析します。 クラリオンの決算・財務分析はこちら ■P/Lの視点 07年までは売上が1800億円付近で増減する中、 07年は営業利益、純利益が大きく減少し、赤字転落となりました。 ただし、08年は業績が回復し、以下の通りです。 ●売上高 07年 1800億円 (前期比-2%) 08年 2500億円 (前期比36%) ●営業利益 07年 31億円 (前期比-42%) 08年 55億円 (前期比78%) ●純利益 07年 -8億円 (赤字転換) 08年 14億円 (黒字回復) 有報でさっと確認すると、07年の減収減益については、 国内OEM市場での販売減、価格減が響き減収、 戦略ブランド「Clarion」に係る広告宣伝費や開発費の費用増で減益、 自社保有の土壌からのフッ素検出による環境調査・対策費用の特損、 が影響したようです。 08年は国内外OEM販売の復調により黒字回復したようです。 次に実際のキャッシュの流れを見てみましょう。 ■C/Sの視点 営業CFは例年100億円前後で水位し基本的にFCFプラスでしたが、 07年は投資CFの大幅な増大(マイナス210億)でFCFマイナスに。 08年は投資CFが例年よりは大きな増加(マイナス100億)となり、 かろうじてFCFプラスとなっています。 財務CFも基本的にマイナスでしたが、07年は100億円、08年は10億円と、 FCFの不足分を補う借入を行い財務CFプラスに転じています。 07年はカーナビ技術力・市場対応へのスピード力を向上させるため、 ザナヴィ・インフォマティクスを140億円で買収したことが、 08年は生産設備・技術センター投資、ソフトウェア投資に 支出したことが投資額増大の要因です。 07年は戦略ブランド、技術力の買収など、戦略投資に集中した 一年だったようですね。 それでは、今まで見てきたP/L、C/Sでの業績・投資による変化は、 B/Sにどのように反映されているのでしょうか? ■B/S及び経営効率の視点 総資産は06年まで減少していましたが、 07年は23%増・280億が増大して1500億円、 08年は微増の1510億円となっています。 07年の増大は、運用面では買収によるのれん増大で100億、 有形固定資産が40億、売債が100億増大したこと因ります。 調達面では長期借入金が90億、仕入債務が130億増大したことに因ります。 08年は調達面で大きな変化はありませんが、 運用面では短期借入金が120億、 長期借入金が40億増大し、株主資本が減少しています。 結果、同年株主資本比率は21%となっています。 07年からの買収・新ブランドでの販売攻勢、 そして借入による調達を行った様が、 B/Sの各項目の増大から見て取れますね。 ■まとめ 販売不調による減収・戦略ブランド費用による減益で07年は赤字となり、 08年は復調し黒字転換しました(P/Lの視点)。 07年は市場対応のスピード力向上のための買収へ、 08年も無形・有形固定資産へと、 FCFマイナスとなるほど積極投資し(C/Sの視点)、 それまで減少していた総資産は、07年以降の「のれん・運転資本」と 「借入による調達」の増加により、増大に転じました。(B/Sの視点)。 08年は業績が復調しましたが、 過去5年を大きく上回る程の回復にはなっておらず、 ブランド戦略・買収等の投資の効果が大きく出ている、 とはいえなさそうです。 本日の記事にあった、日産との提携による新興国市場の開拓と合わせ、 本投資の回収ができるかに注目ですね。 クラリオンの決算・財務分析はこちら 以上の分析でご不明な点等ございましたら、 是非シェアーズまでご連絡ください。 感想もお待ちしております! support@shares.ne.jp お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年06月29日 15時57分22秒
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